映画「エンディングノート」感想

監督:砂田麻美
プロデューサー:是枝裕和
音楽:ハナレグミ


砂田知昭:砂田知昭

あらすじ。男性が自分の死ぬ段取りをする。


感想。俺は砂田さんの生き様と死に様を見た。これは砂田さんの人生である。

キックオフ

砂田さんはガンを知り、自分の死の前と後(!)をひとつの「仕事」と捉えた。
俺はこの着眼点に興味を持った。
砂田さんはTODOリストを作り後任者である長男への引き継ぎ資料を作成した。
病状進行し入院した砂田さんに長男さんが事後の連絡先などを聞いた時老人は衰弱しながらもはっきりと答えた。パソコンに書いてあると。俺は苦笑した。長男さんがパソコンを探したが、その資料がないようだと告げると、砂田さんはそんなこともあろうかとバックアップをとってあると答えた。家族も俺もさらに苦笑した。なんとも徹底している。

WBS

ある困難に対して、技術を持って立ち向かう。
良い構図である。
その技術が時に歌道であったり剣術であったり兵法であったり武士道であったり算術であったり。
昭和であればサラリーマンが磨き上げた仕事術と言うことになるだろうか。平成の世なららいふはっくか。
まぁ時代によって様々だろうと思う。
俺は積み上げられないにんげんでこまる。あたまをつかわない。問題は解決するより放り出す。
俺は一応一回り以上仕事をしておりさまざまな現場ときには会社も変わった。ところで一緒に仕事した人たちでいまだやりとりがあるのはほんの2,3人である。これが俺のにんげんのちからである。
砂田さんは多く積み上げた。家族を見ても分かるし退社時の集まり、葬儀の様子でもそれがわかる。
彼は成功した。たぶんしあわせでもあった。

カットオーバー

フィルムは、砂田さんのサラリーマン人生最後を、退社後の悠々自適を、ガン発覚後を、平等に焼き付けている。監督のモノではないだろうが、砂田さん結婚の様子、人生の節目節目の映像が残っているようである。
じつのところ俺は混乱しており自分でも何を書いているか分かっていない。
戦後をがむしゃらに頑張って駆け抜けたおとうさんの最後を俺は見た。
それは見事に社会とコミットし周囲の人々を大切にしきっちり綱を渡りきった男の物語。
丸の内の昭和の平成の日本という社会の魔術が十二分に発動した空間にある。
俺はそれを目の当たりにした。夢物語でもないし絵空事でもない現実である。
とやかくいうことではない。
俺は彼ではない。