映画『ゼロ・グラビティ』感想(3D、吹き替え版)

ネタバレ要素あり。注意。

博士:サンドラ・ブロック
ベテラン:ジョージ・クルーニー

監督:アルフォンソ・キュアロン

あらすじ。帰りてぇと博士が頑張る。


感想。驚くべき傑作だ。博士がんばれ。

地味。シンプル。骨太。

映画として極めて地味な設定。九死に一生を得る。不純物ゼロ本当にそれだけ。
絶望的状況をなんとか切り抜けるという娯楽の正道王道、格闘技に例えれば拳を固めまっすぐ打ち込む正拳突きの潔さ。本作に比べれば怪作パシフィック・リムですら枝葉が多く思える。
このシンプルな方針をがっちり支えるのは、第一に主演女優サンドラ・ブロックの鬼演技。本作登場人物が二人だが実質ヒロインひとり。つまり90分彼女を映しっぱなしの作品である。一人舞台で最後まで観客を捉えて放さないのはひとえに彼女の演技力なのだ。*1
第二に助演ジョージ・クルーニーと、彼に軽妙な台詞をしゃべらせる練り込まれたシナリオ。特に会話は重要で後々まで物語の展開に説得力を持たせている。
続いて宇宙ともろもろの映像美!CGだかVFXだが知らないがもう俺は魔法と区別が付かない。美しさとは逆に恐怖も容赦ない映像美。目を通して絶望が認識されるというのはお化け屋敷を思い出すまでもなく実に原初的であらがえない感覚である。

物心両面。心身脱落。

深い哲学はない。冒険もない。宇宙人もいないし戦争も起こらない。
夢も希望も奇跡もない。あるのは科学。あるのは物理法則。その方程式の冷たさを彼女は言葉で越えていく。

*1:ところで50近い彼女のプロポーションが恐ろしく魅力的であることを付け加えておく