「その名にちなんで」感想:「カメラを置いてきた。覚えておくしかない」

監督:ミーラー・ナーイル
原作:ジュンパ・ラヒリ 「The Namesake」


アシマ:タブー
アショケ:イルファン・カーン
ゴーゴリカル・ペン


感想。傑作。こころあるならば見よ見よ。
ストーリー、人物、演技、テーマ、音楽・歌、映像、文化、インド、何もかも文句なし。



あらすじ。夫婦と家族の30年。


去年末上映初日に見に行って友と感嘆
もう一度みたいと半年間悶々とし
先日レンタル開始初日に嫁さんと即レンタル・鑑賞し改めて大傑作を確信。
ちなみに上映時、感想を書くことが出来なかった。理由は俺の能力不足である。
男女夫婦間が、
インドーアメリカが、
親子(父−息子・母ー息子)が、
およそ人の生きるあらゆる場面が
葛藤が衝突が和解が無理解が受容が摩擦が絶望が不器用が幸福が演じられ
要するに
俺はまだ語るには幼すぎる。


映画である。家族ドラマといえども娯楽作品であらねばならない。
一場面の構図・台詞・演技の確かさ
場面転換の妙、
不必要な時間をばっさり切り落とし
大胆にスキップしてみせる。
夫婦を演じる二人の俳優女優の至芸よ。
あのキモオタ全開の兄ちゃんが
事故にあい妻をめとり子をなし
己の「立場」の変化に戸惑いながらも
じょじょに
おだやかでいい顔の夫に親父に成ってゆく
右も左もわからないお嬢様が
見知らぬ男とともになり
ふたり異国の地で生活する
寄る年波、異星人のような我が子達
しかし彼女は再び歌い始めるのだ
生まれてすぐの坊やのかわいいこと
歩き始め健やかに育った彼もいつしかティーンエイジャー
父母が疎ましく自分の名前を嫌悪する
独り立ちを果たし家族から離れ待っていたのは
後悔


続く続く人生は続く
だが物語はひとまず幕を閉じる

"私たちはみんなゴーゴリの外套の中から出てきた"*1

然り我々は皆なにかから出てきた


”大遠征”のシーンは
あたかも
ルキアデスの巻物によって
マコンドとホセ・アルカディオ達の百年が
永遠に閉じつつ開かれたように
あるインド系家族の30年の物語を終わらせると同時に
そのちいさな瞳は父を受け継ぐ。
歌は終わる。