アオイホノオ 2巻感想:おまえの漫画をみせてやれ!
- 作者: 島本和彦
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2009/05/11
- メディア: コミック
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- あらすじ。1980年、19歳の焔燃はさまざまな出来事に打ちのめされつつ夏休み直前、ついに漫画持込を決意する
この2巻はすごい。
テーマは1巻に引き続き二本柱だ
マンガが対象年齢を拡大し
TVアニメが高度化し
アニメ・SF映画が隆盛してきた
1980年代初頭という時代のオタク界小史であり
同時に
焦りが無力感が衝撃が高揚感が渦巻いて
ある種の悲哀が漂いつつももちろん
根拠無き自信と滾る情熱が迸る
創作に関わる若者の情念の物語でもある
1980年のオタク界
最初の大事件は、1巻で登場したうる星やつら高橋留美子が
新創刊ビッグコミックスピリッツにて
めぞん一刻連載開始
しかも一話を読んだ主人公焔燃は作者の意図がわからない
ギャグとSFを武器にサンデーで人気を博している最中に
なぜそれらの武器を封印した新連載を?
思い悩む焔
またこの時期は家庭用ビデオデッキが登場した時代でもある。
この機械、持ち運ぶとふらふらするほどの重さであるが
当時においては夢のような機能である「TV番組録画」が可能!
友人は自慢のために重さも省みず学内を練り歩くほどだ
もちろん買えない焔燃はそれでも一時停止→3分でスケッチさせてもらう
サイボーグ009(新)オープニングに対する分析解説は秀逸で
ヒロイン津田の如く「カッコ良かったね!」で終わっていた俺は*1
思わず唸ってしまった
完璧!!
おそるべき完璧なオープニング、
100点!!!
*2
同じように、宮崎ルパンの回に狂喜する庵野*3。同時刻トンコさんと一緒に鑑賞した焔。
持たざる若者の苦悩と焦燥
恋愛面に於いては
密かにあこがれる先輩の彼女であるヒロイントンコさん。一ミリたりとも進展しません!もうひとりのスポーツ少女津田さんとも進展なし。
ないはないなりにごろごろ転げたり必死にポーズを取ってみたり。
キャプテンハーロックの言葉がこころに沁みます。
男は時々何をしてもまったく駄目だという時があるのだ。
キャプテンハーロック!!
若者の根拠の無い自信を支えていた
漫画・アニメであるが
めぞん一刻の意図がわからず
イデオンが理解出来ず…
周りがドンドン俺を残して…
いいんですか
これで…!?
本当に!?
アニメの道は困難だと判断し漫画に集中しようとするも
自分の画力を鑑み躊躇する焔青年
絵が上手いわけではなく冷静に「上手く見えるだけなんです」と把握している。
僕は上手い絵が描きたいんです! 血を吐くような思いを告白する焔燃。
そこでヒロイントンコさんはにっこり笑って
素敵かつ目から鱗なフォローを入れる
素人がだまされれば、
それでええやん。
焔、豁然と大悟
オリンピックじゃないんですよ!
商売なんですよ!!
ああ なんと勇気と希望に溢れた言葉
慈愛と励ましに満ちた思い。
明るい未来・無限の可能性に逃げ込むすべての無能なボンクラどもに捧げ、
声を大にして繰り返したい
オリンピックじゃないんですよ!
商売なんですよ!!
そう、ストーリー漫画にとって画力など瑣末な要素に過ぎないのだ*4