アオイホノオ 2巻感想:おまえの漫画をみせてやれ!

アオイホノオ 2 (少年サンデーコミックススペシャル)

アオイホノオ 2 (少年サンデーコミックススペシャル)

  • あらすじ。1980年、19歳の焔燃はさまざまな出来事に打ちのめされつつ夏休み直前、ついに漫画持込を決意する

この2巻はすごい。
テーマは1巻に引き続き二本柱だ


マンガが対象年齢を拡大し
TVアニメが高度化し
アニメ・SF映画が隆盛してきた
1980年代初頭という時代のオタク界小史であり


同時に
焦りが無力感が衝撃が高揚感が渦巻いて
ある種の悲哀が漂いつつももちろん
根拠無き自信と滾る情熱が迸る
創作に関わる若者の情念の物語でもある

1980年のオタク界

最初の大事件は、1巻で登場したうる星やつら高橋留美子
新創刊ビッグコミックスピリッツにて
めぞん一刻連載開始
しかも一話を読んだ主人公焔燃は作者の意図がわからない
ギャグとSFを武器にサンデーで人気を博している最中に
なぜそれらの武器を封印した新連載を?
思い悩む焔


またこの時期は家庭用ビデオデッキが登場した時代でもある。
この機械、持ち運ぶとふらふらするほどの重さであるが
当時においては夢のような機能である「TV番組録画」が可能!
友人は自慢のために重さも省みず学内を練り歩くほどだ
もちろん買えない焔燃はそれでも一時停止→3分でスケッチさせてもらう


サイボーグ009(新)オープニングに対する分析解説は秀逸で
ヒロイン津田の如く「カッコ良かったね!」で終わっていた俺は*1
思わず唸ってしまった

完璧!!
おそるべき完璧なオープニング、
100点!!!

*2
同じように、宮崎ルパンの回に狂喜する庵野*3。同時刻トンコさんと一緒に鑑賞した焔。


他にも個人でのセルアニメ作成に愕然とする焔。二週間ほど関わりクビになりましたが。新海誠が出てくるのは約四半世紀あとだ。

持たざる若者の苦悩と焦燥

恋愛面に於いては
密かにあこがれる先輩の彼女であるヒロイントンコさん。一ミリたりとも進展しません!もうひとりのスポーツ少女津田さんとも進展なし。
ないはないなりにごろごろ転げたり必死にポーズを取ってみたり。
キャプテンハーロックの言葉がこころに沁みます。

男は時々何をしてもまったく駄目だという時があるのだ。

キャプテンハーロック!!


若者の根拠の無い自信を支えていた
漫画・アニメであるが
めぞん一刻の意図がわからず
イデオンが理解出来ず…

周りがドンドン俺を残して…
いいんですか
これで…!?
本当に!?


アニメの道は困難だと判断し漫画に集中しようとするも
自分の画力を鑑み躊躇する焔青年
絵が上手いわけではなく冷静に「上手く見えるだけなんです」と把握している。
僕は上手い絵が描きたいんです! 血を吐くような思いを告白する焔燃。
そこでヒロイントンコさんはにっこり笑って
素敵かつ目から鱗なフォローを入れる

素人がだまされれば、
それでええやん。

焔、豁然と大悟

オリンピックじゃないんですよ!
商売なんですよ!!

ああ なんと勇気と希望に溢れた言葉
慈愛と励ましに満ちた思い。
明るい未来・無限の可能性に逃げ込むすべての無能なボンクラどもに捧げ、
声を大にして繰り返したい
オリンピックじゃないんですよ!
商売なんですよ!!

そう、ストーリー漫画にとって画力など瑣末な要素に過ぎないのだ*4

古いオタクは読むべきであり若いオタクは読むべきでありすべての創作者(になりたいもの)は読むべきである

こうして物語は、空手−コピー機闘将ダイモス(!?)という奇跡的つながりを見せて終了する。
1巻表紙。薄暗い部屋の隅でひとり物思いにふけるようにして横になっていた青年は
2巻、ヒロインとふたり寄りそっていた(で、アニメをみてた)。
3人目が、あらわれるのだろうか。
この先の話しは東京持ち込みにシフトする模様。
果たして焔青年はどのような生き様をみせてくれるであろう。
大いに期待したい。

*1:ちなみに作中の009OPの出だしはきちんと「チャララッ、チャララッチャッチャー」が二回繰り返されるTVサイズ

*2:余談だがよくみると福本伸行文法と被ってる印象を俺は受けました。いいねえ

*3:宮崎ってことはこれ、アルバトロスの回でいいのかな

*4:たぶん小説も…たぶん…