メカビ感想その21:p82−91

  • 若者は何故「萌え」を選ぶのか?:p82−91
    • p82−91.皆川ゆか評論
    • p82−83、中央ぶち抜き黒地白抜き横書き「若者は何故「萌え」を選ぶのか?」
    • 同題名右隅、縦書き「皆川ゆか
    • 同本文縦書き三段組
    • p83.一段目左隅、二段目右隅、二段・三段目ぶちぬき左隅、それぞれ図1、2、3
    • p84.以降、本文は縦書き四段組
    • p85.一段目左隅、二段目左隅、それぞれ図4、5
    • p87.一段目左隅、三段目右隅、それぞれ図6、7
    • p90.四段目右隅、図8
    • p91.左下、皆川ゆかプロフィール
  • 要約・抜粋
    1. オタクは情報の消費者といえる
    2. 本稿ではオタクを「児童性のあるものに強い興味を持つ、児童以外の層」とする。
    3. 現状は「一億総オタク」ではなく、オタク的に没入していない「一億総ファン」化と言った方が良い。
    4. 一般に企業の寿命は三十年。「創業期」、「成熟期」、「減衰期」
    5. 「成熟期」に投資の回収と次の新規事業展開を行うことにより、持続的成長を図る。
    6. マンガ市場にこのモデルを適用すると、以下のようになる
    7. 1950年代「児童マンガ」→60年代「劇画」→70年代「第一次青年誌創刊ブーム」「少年マンガ誌拡大」→80、90年代「第二次青年誌(ヤング誌)創刊ブーム」「TVアニメを牽引力とした少年誌の躍進」→現在「マルチメディア戦略」の成熟期〜衰退期
    8. 「マンガは既存のメディアに割かれていた時間を侵食する、あるいは割かれていたであろう時間にそのまま居座り続ける事で発展していきます」
    9. 八十年代に、ユーザー囲い込みの完成と社会的に全ての層を開拓し終えたといえるだろう
    10. その後はマンガ単体ではなく他の商品(メディア)との連携。
    11. 「有限なユーザーの時間をいかにして獲得するか」
    12. ガンプラの非卒業戦略。300円→HGシリーズ→MGシリーズ→PGシリーズ
    13. 経済学の無差別曲線の考え方を援用し「価格・所得」と「児童性」を軸に消費傾向を考察
    14. 旧来の「成人の購買欲は児童性の少ないものを優先する」にあてはめると、児童性が高いものは価格を下げてやる必要がある→食玩の流行など
    15. マンガ文化の成熟期を越え、爛熟期を迎えた段階で、新たな層が生まれた→同一年齢層の中で高い児童性を持ち、所得の多くを「児童性」の高い商品へ振り分ける層「マニア」「オタク」
    16. 企業側はこれに呼応しキャラクター商品に存在する「児童性」を糊塗(パッケージから子供っぽさを失くす・減らす)→非卒業戦略
    17. 東浩紀氏の「オタク的嗜好が政治的な運動の代用品であった」説に疑問
    18. 情報はメディアに依存する。各メディアへの依存率は世代によって異なる
    19. 可処分所得をまず情報取得のインフラに振り分ける。同じ商品は二度購入しない。オタクビジネスの限界
    20. 「可処分時間」概念。食玩・グッズ・フィギュアなどは(時間を掛けて読む・観る・遊ぶが必要な)本DVDゲームと違い、購買行動そのもので効用が得られ、その後も存在を確認するだけで効用が得られる→時間対効果が高い
    21. 娯楽メディアの競争は所得争奪ではなくユーザーの有限な時間の奪い合い
    22. 萌え要素はセグメントに過ぎず、スナック菓子における「カレー風味」「コンソメ風味」程度に見做すべき。
    23. 商品価値が要素に依存しイメージを誇張する→「少量多品種生産」→進む市場細分化、激しいコスト競争
    24. 「今日の「オタク」的な消費行動を眺めると、細分化された要素嗜好がその実、時間対効果の向上に繋がっていることがわかります。」
    25. 「新たに作品を消費する時間を最小限にできる」→「「萌え」に対する消費行動は「オタク」の保守化」
    26. 「萌え」ユーザーは若年層
    27. 「「オタク」はすでに「非オタク」が支払う時間的コストを「オタク」的なものに費やしている」→「資金的にも時間的にも低コストで大きな効用を得られる「萌え」に向かったのは必然」

「萌え」を知らないオタク達、旧世代からの使者。タロットシリーズをついに完結させた剛の者、第一級ガノタの登場である。
年齢。所得。児童性。時間。情報。情報を得るための基盤。世代。各時代のメディア。
漫画に小説にアニメに映像作品にゲームにのめり込み気の遠くなる時間を費やした世代の一古参。
「「萌え」は自らの選択であり、高い精神性と崇高な魂である」と見做す形而上的指導者どもに地獄の一撃。
「萌えだか何だかしらないけど、外部に流されているだけじゃん」な論調。
可処分時間に重点を置き「萌え」は時間的に効率がいいからみんな飛びついた、企業もそれを誘導した、という夢も希望も知性も哲学も神も仏も無い結論。
他の評論に比べて抽象概念が少なく(哲学用語は皆無)、数字とモデルと歴史的推移を材料に「萌え」ムーブメントを説明。
恐ろしい。隙がない。圧巻である。弱い俺には反論ができない。
オタクは素人よりもむしろヌルオタを激しく嫌悪する。これは事実。
「萌え」ユーザーはこれに立ち向かわなければならない。
ヒステリーも無視もまかりならぬ。見事先達を乗り越えることを希望する。
議論の無効化とかくだらねぇことするんじゃねぇぞ小僧ども。ただ子分が欲しいだけのアジテーターはすっこめ。
闘いが見たい。


誰ですか雑誌にこのひとを呼んだのは。素晴らしい。




皆川ゆか資料刊行会電子広報室
http://www2s.biglobe.ne.jp/~minakawa/index_result.html

4061986988運命のタロット〈1〉「魔法使い」にお願い?
皆川ゆか
講談社 1992-09

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4063301109機動戦士ガンダム公式百科事典―GUNDAM OFFICIALS
皆川ゆか
講談社 2001-03-21

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