雑記 ながい散歩

高い青空と冬とは思えぬ日差しにうずうずして外へ
ふたりでぶらぶら土手を行くと枯れた桜の並木
川にはいつもの鴨たちの他に白い鳥の群れ
鳴き声や飛び方がなんとはなしに海鳥っぽいのだが ここは海から遥か離れた中流地帯
でも嫁さんも同じように感じてたらしく 不思議だねえと言い合う
葱畑を見かけ嫁さんが根葱だと言いへえと答えたら去年も一昨年も同じ話をして同じ反応だったと言われ覚えてないので恥ずかしくなる
橋を幾つか横切って足の向くまま左折北上、
キティちゃんは猫を飼っているらしいという冗談みたいな話からサンリオやディズニーの話になりミッキーの魔法使いの弟子は怖いと嫁さんが言いほうと思う
最寄り駅を越え
陽気に気分がいいので隣駅に進む
見慣れない団地を抜け角を曲がると嫁さんがこの道は知っていると言う
俺はどうにも覚えがなくそうかなそうかなとしきりに首を捻ったが
こういう場合まず嫁さんが正しいのでそうかもしれんと思う
俺でも分かる隣駅付近の病院を見かけ、確かここは少し評判になった病院だと言うとどんな評判と聞かれたが
そういえばいい評判なのかわるい評判なのか思い出せない
正直に思い出せないと答えてふうんと返される
隣駅から帰るなら左折してぐるりと回ればなのだが
コーヒーとハンバーガーで一息ついたらふたりともまあいいかで右手の郵便局方面へ向かう
数年前は狭かったが区画整理かなにかで大通りの体裁である
俺は二三ヶ月前写真館へ行くため歩いた通りだ そう言うとそんな事をいってたね写真館は近いのと聞かれだいぶ歩いたまだまだ先だと答えた
十字路を幾つか過ぎるとすぐ商店はまばらになった
田舎じみた町並みで好きだと嫁さんが言う
コンビニが見えて右に曲がることにした 写真館はさらに直進で、ずいぶん遠いねと言われる バス停留所五六本先だったからと答える
子どもがもし習い事したいと言い出したらどうすると聞かれてうーんどうかなと話し合う
道幅広く坂道が意外だったけど店などはまばら そのまま行くと浄水場が見えるはずだが
町並みの平坦さに不満そうな嫁さんがさっさと脇道に入った
うって変わって細い道をすこしいくとどうやら商店街のようである
思いがけなくて、興味深く眺めると
地元のそれと違い やけにスナック、飲み屋のたぐいが目に付き重ねて驚く
周囲は一戸建て中心のいわゆる昔からの住宅街の風情
よく商売成り立ってるなと感心する
ふたりは何処に向かっているかすでに正確には把握していない
来たことない地域で見るもの皆珍しく、嫁さんが喜んでいる
知らない道を通るのが好き元気が出ると彼女は言う ひとりだと知らない場所はつまらないと答える
幼稚園で送迎バスに園児を乗り込ませている バスは二台
見覚えのあるバスだがこの辺は家から相当離れている 気のせいかもしれない
道行く親子連れが多いと話す 改めて俺達の地域は老人が多いと頷き 行きで話題になった嫁さんがネットで読んだ出産と仕事と少子化の話を思い出す おんなの敵はおんなかなと嫁さんはうんうん考えていた
ふたりとも明らかに知っている通りに突き当たる 知らない道はおしまい 嫁さんがすごくしょんぼりして疲れがどっと出たとぼやく
変わった外形のマンションを見つけパチンコ屋みたいと言ったら前も同じこと言ったとからかわれる この件はなんとなく記憶にあり俺は一貫性があると負け惜しみを放つ
ずっと昔暮らしていたあたりに出た 嫁さんは知らない場所だ
昔住んでたと言うと驚いたようで神社をさしてここ来たことあるよと言った
川に向かう道が見覚えなく、呆気に取られる 新しい道路と家々のようだ
ブーフーウーっているじゃないと嫁さんが言った。私は子どもの頃レンガの家に住みたかったと言った
市のプール施設が向こうに見える
橋を渡って逆の土手に入って帰路につく
左手に大学、川のあちこちにぶよの塊 手で払いながら歩く
この虫なんていうのと顔をしかめる嫁さん
みみのむしじゃないのと答えて怒られる
すでに普段の散歩道である 土手の斜面が芝生っぽいと嫁さんが言う 本当だ人工的 近所の土手はそうじゃないのにどうしてここだけなんだろうと不思議がる
昔サークルの連中とこの辺で写真を撮ったよと言う その顛末を話してくれた嫁さんが しゃべってみると面白くないなと困っていた
大学のそばの橋あたりでかん高い鳥のさえずり
河原に目をやるとぐあぐあと鳴くはずの鴨の群れしかいない
はてと首をかしげ何度も群れを見返す
左手の斎場で先日見た映画のおじいさんを思い出す
行きに見かけた無天下の文字を通る
これは無添加のもじりだろうか
中学校に差し掛かったころにはふたりとも足が棒とか疲れたとか音を上げる
長い長い散歩
寒風を警戒し厚着だったがじんわり汗ばんでしまった
日が傾くのが早い
よくまあこれだけ長い時間歩いたり意味もなくしゃべったり出来るものだ
この川もずいぶんきれいになったように思う 川底が見える 釣りびとがいることもある 立ち止まると鳩が寄ってくるらしい
あのかん高い鳴き声は子鴨だったかもしれない