Vol.5感想:ドクター・ナカムラ 象を撃つ
ドクター・ナカムラ
- バリー・ユアグロー 柴田元幸訳
- 連載Gangster Fables 5
- あらすじ。売れない作家が映画の端役を貰ってロケ地に到着。冗談好きの監督から”ドクター・ナカムラ”のあだ名を頂戴する。女優と飲んだ後部屋に戻って眠りにつく作家。夜半監督が思いつめた顔をして部屋を訪れる。箱を差し出し今すぐここを出てこれを捨ててきてくれどこでもいい見つからない場所へ。何が入っているんですかと作家は聞く。監督は泣いており話にならない。いや、笑っているのか?
感想。面白い素晴らしい。
ちょっとしたお話しに過ぎないのに、ついつい最後まで読まされてしまう。深いメッセージがあるわけでもない新しい趣向が凝らされているわけでもない。
それでも面白い。
ただ語り手の技量と言う他ない。お見事。
象を撃つ
- ジョージ・オーウェル 柴田元幸訳
- 「Monkey Classics: Overseas」 小説です。
- あらすじ。ビルマ。大英帝国の小役人である主人公は発情した暴れ象の追跡に向かう。ある家で現地人がひとり踏み潰されて死んでいた。身の危険を感じた主人公はライフルの調達を命ずる。それを知った現地人たちが興奮してついてきた。皆、象が撃たれる所が見たいのだ。発見した象は既に発情が収まりかけて落ち着いていた。背後の二千人の現地人。主人公は撃ちたくないにも関わらず象を”撃たねばならない”ことを悟る。
感想。手法といい描写といいテーマといいずいぶん古臭い小説だが、やはり大したものである。
びっくりするほど直線かつ明確な小説で逆に新鮮なこころもちである。
現代的という意味ではないが、主人公の内面は非常に普遍的なもの。
短篇小説の王道のひとつと言える。