Vol.5感想:九月 部屋 バケツの騎士

九月 部屋

  • 岸本佐知子
  • 連載 あかずの日記5
  • 作品中の「翻訳」はStacey Levineの”My Horse and Other Stories”よりとのこと
  • あらすじ。翻訳進まず。郵便受け。夢の中でシャワー、腰におでき。散髪。夢の中の部屋、ケロロ軍曹の子供靴。たぶん秋はもう来ない。同級生もへじと再会。再び部屋、おでき。分数アパート(かもしれない)一室に忍び込み確かめる。子供靴もおできもない。郵便受け。

感想。ステイシー・レヴァインの短篇が素晴らしい。


ステイシー・レヴァインの短篇は、作中に翻訳作品して書かれている。
俺はこれが始まったとき、作者岸本さんの創作かなと思った。
そしてそのレベルの高さに感心した。なんだ小説書けるんじゃん。
文章の密度は濃く物語りは波乱と寓意を含み結末は衝撃&ユニーク、そこだけ立派な”小説”と呼べる空間だ。
例えるなら普段着(いもジャージクラスの)でごろごろだらだらねっころがっていた文章に突然
帽子を目深に被った怪紳士が現れ、あわてて正座するような。
ところがどうやらこの短篇は本職の手によるものだったらしい。がっかりである。
しかもおかげで、本文の小説としての貧相さが際立ってしまった。
うーん…
いや、毎回言ってるように
手遊びに書いたなんちゃって日記(ないしはエッセイ)としてなら充分面白いのですけど。

My Horse and Other Stories (New American Fiction Series)

My Horse and Other Stories (New American Fiction Series)

バケツの騎士

  • フランツ・カフカ 西岡兄妹 池内紀
  • あらすじ。石炭が尽きた。石炭用バケツにうちまたがる、私はバケツの騎士。空を軽やかに駆け石炭屋に石炭を買いに(後払いだが…)行くのだ。

感想。んんんマーベラス!強烈忍者(褒め言葉)


断食芸人レベルの名作。
コミカルな滑り出しユーモラスな掛け合い急転直下の結末。
西岡兄妹のあの画風ともぴたりと噛み合った逸品です。
嫁さんは途中でオチに気づいた模様「だって男に聞こえて女に聞こえないんでしょ」
妙に納得してしまいました。