プロデューサーズ:「ショーは続けなければならない」

鑑賞後映画館出口にて偶然サークルの同僚に会う。居住地域と奴の趣味を鑑みれば不思議はない。が、ちょっとびっくり。奴は面白く観劇しただろうか…
さて。

映画館で涙流して笑ったのは多分初めてだと思う。
また、だれることなく最初から最後まで笑えた映画もそんなに多くは思い出せない。
以前作品感想の数値化はしたくないと書いたが、俺は発言に無責任なので他作品と比較するとしよう。
笑の大学の10倍
チャーリーとチョコレート工場の5倍
銀河ヒッチハイク・ガイドの3倍
食神の2倍


脚本はシンプルで起伏に富み愛と希望が溢れている。
役者は恐ろしいまでの芸達者ぞろいでその層の厚さに愕然とする。淀川先生ではないがほんとこんな国と戦争しちゃいかんわ。
笑い、こればかりは個人の趣味なのでちょっと歯切れが悪い。とにかく俺は大好きな笑いだった。モンティ・パイソンサボテン・ブラザーズのいいトコ取りみたいな。周星馳クラスを10人揃えて予算100倍の食神を作ったみたいな(食神の弱点は周星馳がひとりしかいないこと)。下ネタエロネタ政治ネタ、ついでに演劇ネタ。アドルフ・エリザベス・ヒトラー。“Springtime for Hitler”。ゲイ。鳩。言っとくが、笑えなくても俺ぁしらねぇよ。
ミュージカル。ああいつぞやチキ・チキ・バン・バンを観ておいて本当によかった。
役者とその芸。海の向こうの連中の恐ろしいところは、ライトノベルも裸足で逃げ出すお気楽極楽な世界を凄まじい芸の力で成り立たせるところです。歌・踊りは言うまでもないが、ふとした仕草や細かいギャグ時の何気ない神業は、一体どれだけ節制し訓練を積んでいるのだろうと気が遠くなる。
恐らくだが。ショービジネスはそれほど過酷なものなのだろう。天才がひしめき努力を怠れば見抜かれ追い抜かれ放り出される。大金が動き権力が幅を利かせ、成功のためならなんでもあり。地獄の別名。「これが”深み”だ」。
ゲーノー界などとはちょっと違う。
人に夢を与え人に夢を見させることの地味な困難さ。
陳腐なエンターテイメントがいかに素晴らしく、結局物語の行き着く先は喜劇であるべき(人生とは悲劇ゆえに!)ことを高らかに宣言する強靭さ。
牙なきひとびとの一瞬の快楽のため、人も通わぬ山奥に咲いた紅葉の心意気。


凄いぞ!映画館を出てインド料理屋でカレー食ったらもうほとんど内容が思い出せない、ただ幸福感だけがある。こいつぁ本物だ!


日本での興業は失敗するだろう。ろくに話題にもなるまい。惜しい。