友と食事、あと映画イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密

有楽町で会いましょう

その映画は都内数カ所でしか上映していないと友は言った。
俺は有楽町を選んだ。待ち合わせ時間前に到着した俺は友にその旨メールしたら返信がきた。
池袋待ち合わせだと思っていた。
俺は瞬時に状況を悟った。そう我々は上映館の話はしたが、合流場所についての話をしなかった。
第一の想定外である。
茶店で待っていると到着したと友からメールが来た。某の何番出口で待つというので向かったら別出口だったようだ。
ではどこそこの改札前でとなって地上線の改札で待っていたら地下鉄の改札前だという。
顔を合わせた頃には30分以上経過しておりダブル方向音痴だからすさまじい結果だと二人で笑った。
第二の想定外である。

たそがれの銀座

ジャニーズファンの行列を横目に映画館に到着した俺と友は目当ての映画が満席であることを知った。
次の最終の回も満席でありとくに友は愕然としていた。
友は観客は十数名に違いないと信じていたと言った。俺は笑いながらそういう日もあると答えた。
第三の想定外である。
まったく有楽町は日比谷銀座丸の内など徒歩圏内なので映画館に事欠かない。何か別の作品を鑑賞すべく俺と友は町をさまよった。


友は以前から見たかったのでちょうど良かったと言った。
エニグマにまつわるエピソードは多少聞き及んでいたが詳しくは知らない。俺は面白そうだとうなずいた。
チケットを買った我々は上映までの時間をつぶす必要ができた。
ひとまず喫茶店に入り旧交を温めた。
春琴抄をすすめリョサボルヘスのダンテ講義の話を聞いた。お互い仕事の話をしアニメの話をした。
日が暮れるころ早めの夕食をとることにしたはいいがもちろん店舗に当ては無い。
ぷらぷらふたり歩きながらふと魚看板が目にとまった。俺と友はここにしようと階段を上り店内に入った。
入り口はカウンター、個室の内装も店員さんの物腰も素晴らしくこの店は期待できそうだと友と目を合わせた。
メニューを見るがどうも様子がおかしい。魚がメインのように見えない。というか記載内容は韓国料理である。
俺と友はおやと声を上げた。言われてみれば内装や食器が韓国で統一されている。同階で別店舗に吸い込まれたようだ。
第四の想定外である。
我々は苦笑しながらしかしここは良店と直感したのでそのまま食す。結果は期待以上に満足できるものだった。

イミテーション・ゲーム

映画は二次大戦、ドイツが用いた暗号”エニグマ”を解読するため奮闘した数学者チューリングをそのチームを描いたもの。
チューリングは社会不適合型の大天才である。彼は周囲と衝突し疎まれあわや計画から外される状況に陥る。しかしひとりの女性の登場で好転する。
彼とそのチームは暗号を解いた(正確には解読する機械を完成させた)。
それは彼らの知性の勝利だった。しかし。。。。


エンドロールが流れ終わり幕が下り照明がともった。俺はうむとうなった。隣席の友は当初の映画より、きっとこっちが面白かったなと言った。
おそらくと俺も同意した。


俺は駅で友と別れひとり帰路の電車に乗り今日一日の顛末を回顧した。
ちぐはぐなボタンの掛け違いが連続したが俺と友は最悪の一日だと絶望したか。いや。

速く行きたければ一人で行きなさい。
遠くまで行きたければ一緒に行きなさい。