お台場のガンダム見物

ゆりかもめ車中のざわめきに外を見ると
遠く小さくガンダムが見えた
反射的に下車してから、そこが最寄り駅でないことに気がついて苦笑
駅を出て見えた方角に向かう
風はぬるく塩気を帯びて重い
海が開けてその波打つ黒錆色の液体に愕然とした
進むにつれ人が増える。お子様連れ家族連れが目立つ。



ガンダムだ。。。
四年前、ボトムズのスコープドッグ1/1に感じたのは恐怖であった
ところがガンダムを見上げて思うことは「立派だなぁ」という奇妙な誇らしさだった
富野監督が”おもちゃカラー”と表現したいつものあのガンダム
思い思いに携帯をデジカメを構える皆さん
つちぼこり 屋台の食欲をそそるけむり 
強い日差し わいわい歓談 日陰で座り込み涼むひとびと
賑やかで親しげな雰囲気が公園に充ち満ちている
どういうわけかそれを当然と受け止める俺がいる
思えば不思議なはなしである
この殺伐とした昨今、
飲食店の行列といったごく一部を除き、これといったスタッフの誘導もないのに
皆がお互い譲り合うような空気
ぐるりと周囲を巡り喫煙所でタバコを吸いつつつらつら物思いにふけっていた


そこで突然ぼしゅうと音がして
ガンダムの肩や脚部から白い水蒸気があがった。
見とれるまもなくガンダムがゆっくり首を左右に振り軽いどよめきが起こる
二三度下界を睥睨したと思ったら
やおら彼は上を向いた。天を仰いだ。
そのときの高揚感をどう説明しようか ほおおぉ…と一様にため息が漏れた
次の瞬間、俺と嫁さんは拍手をしていた みんなみんな拍手を送っていた
ガンダムが俺たちに気を掛けて見回してくれた時よりも
彼が決然と空を見上げたことのほうが
数倍俺を感動させた
俺たちなんかは気にしないで翔べガンダムと俺は願っていた
俺はきっと嬉しかったのだ