Vol3.5 屋根裏の法学者 押し入れのトヨザキ氏

屋根裏の法学者

  • 宇野浩二
  • 「Monkey Classics: Japan」 小説です
  • あらすじ。主人公は幼少より文学を志したが、いろいろあって法科に進学。卒業してもそっち方面へ就職せず生活のため売文の日々。あるとき田舎の母の扶養が必要なくなったので小説を書こうと志し、やめる。押入れから通りを観察する。横綱は容易いと考える。弁護士は容易いと考える。幅跳びで空を飛べると夢想する。実際に下宿で幅跳びしてみて失敗。下宿屋のおかみと会話。

感想。一度しか言わない。傑作です。ああむかつく。

    • 宇野浩二さんという作家を初めて知ったが普通に大御所だったようで恥ずかしい。
    • タイトルはオマージュだろうなあ。作中に屋根裏なんて出てこないし。
    • くそったれ。こんなものすごい小説を書くやつはしねばいいのに。*1
    • 押し入れでゆっくりした結果がこれ(文学の鬼)だよ
    • 近い手触りだと森見登美彦さん?アンゴー風博士っぽい感覚も受ける
    • 駄目ながらも妙に愛嬌のある主人公。馬鹿馬鹿しくも本人なりに真剣な連想・夢想のかずかず。社会不適応的自尊心と衆愚蔑視。
    • おかみさんの一言にひょいとこころを直指されて感心する主人公
    • 駄目だこいつ 早くなんとかしないと
    • こういう呼吸が書ける作家には絶対近寄らない方がいい*2

押し入れのトヨザキ氏

  • 豊崎由美
  • 上記小説について自由に筆をふるったもの
  • 概要。幸せな怠け者になりたかった。宇野浩二小説のキャラはそんな自分のアイドルであった。屋根裏の法学者的世界はあたかも桃源郷

感想。おっかねぇおばはんだなーこういう文章を鵜呑みにしてはいけない(褒め言葉)


豊崎由美さんという方をよく知らないがたくさん本を読んでる偉いひとのようだ。
ずいぶんな文章芸である。これといった内容はないのに最後まで読まされ、なんとなく印象に残る。
ただただ読者に向けて一心不乱に書き上げられた野生のエンターテイナー。そのスタイル。
おのれの素性本心を隠しおおせて手と腕、小手先小細工で目を楽しませる作品を作りきるとは…これは尋常ではない*3
しかも多くの書評子評論家論文屋にありがちな功名心がないので心地よい。
かわりに彼女の奥底には怒りがある。


文壇大サーカスの
どんな至芸も彼/彼女らを通じて観客に届けられる。
どじで間抜けなクラウンこそが最大の芸達者であるのだ。

*1:1891/07/26 - 1961/09/21

*2:読めということですねわかります

*3:まったく印 哲のにんげんは既知外ぞろいだな