フィールド・オブ・ドリームス感想:ベースボール 善きもの ドク

B000E6GB3Uフィールド・オブ・ドリームス
ケビン・コスナー エイミー・マディガン ジェームス・アール・ジョーンズ
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン 2006-04-01
asin:B000E6GB3U
by G-Tools


ブラックソックス事件を知ったのを機に鑑賞。


あらすじ。30代農夫。妻と小さい娘と仲良く暮らす彼はある日声を聞く。像と声に促され、トウモロコシ畑を潰して球場を自作。ある夜数十年前の野球選手が出現。しかし一家は破産寸前。再び声を聞き単身作家に会いに行き、供に元野球選手を探しに旅する。目当ての男は既に死去。妻より土地の売却を知らされ家に戻るが…


感想。なかなかの良作。メッセージ性は強いが演出は控えめ、ずいぶん静かな映画でもある。


日本に遠野の闇。彼の国には陽が振り注ぐトウモロコシ畑。
イタリアに映画天国があるならば、アメリカにはベースボールパラダイスがあるのだろう。
すべてを(自国民をも!)踏み潰して驀進する怪物国家の善きもの。
筆を折った作家。1イニングだけメジャーを体験した町医者。屈折した農夫。
ホワイトソックスの面々。
シューレス・ジョーが白昼仲間を引き連れて畑から現われる。白いユニホームに身を包んだおっさん数人が身体を揺らして寛いでいる。キャッチボールを始め、軽く走り出す。
彼らの身体を動かす様はなぜか俺をしあわせな気分にした。
これから演奏を始めようとするジャズ奏者たちを思わせた。
ゆったりした中に闘志を秘め、だが何より楽しんでいる。
ただ白球を遣り取りししなやかに身体をほぐし構えること、
ベースボールをプレイするということそのものを
はにかみながら大事に味わっているその様。
ルーキーを迎えて優しくなどしない。手を差し伸べる代わりに、小突きからかいやってみろよと見守る。
元野球選手の医者のじいさま。マウンドを出るルーキー。
作家とともに入った球場の売店の腕組みガイズ。
ヘッドライトの列。
帰り際溶けちゃうよとおどける選手たち。
入り口でおっかなびっくりなでも笑顔の作家。
親父。

思い出せない
そんなことない
少し扉を開くだけです

ついに歴史を持ち得なかったアメリカには地上の王しか存在しない。
大工のせがれやアウトサイダーの大司祭のかわりに
アメリカはトッププレイヤーを信仰する。*1
海と大地の間ではなくアイオワに咲く天国
天気の良い午後ひとびとがこどもにかえる場所
good.

*1:それはつまり誰でも神になり得るということ。その座につくさいに身体性を重視するのが特徴か。対してもうひとつの非キリスト教大国は内面を重視する模様