野球号全感想:野球のダイヤモンド、小説の輪郭
- 小川洋子×柴田元幸 対談 P8-24
- 以下要約
- 柴田氏は横浜ファン。小川氏の父・弟は阪神ファン。女史は特定の球団をあげてない。野球観戦が大好き
- 小川女史の子供時代、おとなしい弟、田淵の背中タッチ。オースターのサイン貰い損ねエピソード。ライ麦畑
- 美しいプレーについて。野球選手のプレー。
- ファン的な敗戦の理由探し。勝ちが絵になる選手、負けが絵になる選手。
- オースターの「poetic justice(詩的正義)」。その観点からの巨人軍批判。
- 小川女史の近著と野球について。その作品集のテーマ。小説の輪郭について。
- 「じゃあ何が小説の手がかりになるかというと<輪郭>なんです」
- 女史の中で輪郭が明確であれば一行目がバシッと決まる
- 男子ソフトボール部のドラマ性
小川洋子 - Wikipedia
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さていきなり俺にとって難題である。
野球を知らない。小川洋子さんを知らない。
俺は以前書いたように
野球を初めとするスポーツ全般から快楽を引き出す術を持たない
なので両氏の野球鑑賞術は驚きでした。
嘘。よくわからん。自分はつくづく偏った人間である。
対談は柴田先生が小川さんから巧みに話を引き出してすすむ。
小川さんの口調は生き生きとして野球愛に溢れている。
柴田先生も負けず劣らずの野球好きなのかもしれないが
今回は聞き役に徹しているせいか、どちらかというと
小川さんの話に興味をもっておられるように感じました。
また随所にネタにされるポール・オースターの野球話*1。
強者はひとを惹きつける。彼らが全力をあげてぶつかればなおさらである。
勝者がうまれ敗者がうまれる。記録が逆転が繰り広げられる。
流転し完成せず留まるところを知らない。
小川さんの使っておられた<輪郭>という言葉は独特の響きだ。
小説の輪郭。わかるようなわからないような。
ドラマが励起するフィールド、枠組みといったものか。
女史の小説の技法でありやり方でありおそらくは奥義でもあるだろう。
それは彼女にしか実行できない芸なので秘密であるようで隠す必要が無い。
誰も真似できないからである。
トークショウや講演に訪れるファンの中で
なにやら
作家の「秘密」を知りたがっている熱心な方々が散見される。
それは自分で掴むもの、編み出すもの。
武芸に生きるのは容易くないということか。
*1:それにしてもオースターの逸話は知っているものも含めて如何にもオースター印。女史評して「決して引き返せない深みに、どんどん飲み込まれていく」。飲み込まれて、はいいな。