現代狂言2 狂言とコントが結婚したら:感想
IN国立能楽堂。
感想。繰り返すが素晴らしかった。前回よりよくなっていた。そこが不安だったので感慨ひとしお。
次回も見に行くでしょう。
前回の感想は以下
○△□ - 「現代狂言」観劇
http://d.hatena.ne.jp/mini_k/20060701/p1
番組は
(文中敬称略)
ご挨拶は南原清隆。
固さが取れより自然体。
自信を深めているようでgood
二人大名(古典狂言)
- 使い:野村万蔵
- 大名:野村万禄
- 大名:野村扇丞
- ふたりの大名が野原に遊びに行きます。家の者がすべて出払っていた大名は、たまたま通りかかった見ず知らずの使いの男に頼んで太刀を持ってもらいます。大名は家来でもない使いの男にあれこれ注文を付け続け、ついに使いの男は怒ってしまいます。預かった太刀でふたりの大名を脅し、着物や刀を盗りこっけいな物真似を強要します。威張っていた大名達は、返してくれと繰り返しながら要求をこなします。
序盤からふたりの大名が別々を見やりながら手を振り野原出現。
事も無げに絶妙な芸に俺喝采。
使いと大名達の遣り取りが可笑しく嫌味がない。
あざやか。
そのうちふたりの大名の間にも微妙な空気が流れるあたり、にんげんのどうしようもなさが愉快で笑いました。
一人サラリーマン(翻案狂言)
- サラリーマン :岩井ジョニ男(イワイガワ)
- 社長 :渡辺正行
- 副社長 :平子悟(エネルギー)
- 社長と副社長が千駄ヶ谷の国立クラブに遊びに行きます。悪事すべてが書き込まれたCDROMをそうとは知らずに届けに来た無能なサラリーマンが、ふたりの命令のままに物真似などをやって笑いを取ります。やがてサラリーマンはCDROMが重要なものであることに気付き、社長副社長に物真似などを強要します。満足したサラリーマンはCDROMを返し、社長副社長は胸をなでおろして機嫌よく帰るのですが…
前回も出演していた平子悟の狂言センスは異常。
相変わらず声通り所作も板についている。これは天稟。
渡辺の出オチも爆笑。さすがの安定感に感心。
ここで気になったのはサラリーマンの動作です。
からだの切れは良く、面白い。文句なしに見事。
しかしそれらの所作に背景がない。無駄な動きが多い、ということ。
これを否定してしまうとただの伝統芸能マンセーになってしまう。
でも制御されていない身体操作は、特に並べられると、大変見苦しい。
面白いのだから許容したいのだけどちょっと困ってしまった。後述します。
TANE〜種〜(現代狂言)
- お笑いコンビ「世阿弥」の男1:南原清隆
- 敏腕ディレクター:野村万蔵
- 大物狂言師:島崎俊郎
- 世阿弥の霊:野村扇丞
- AD:ドロンズ石本
- カメラマン:森一弥(エネルギー)
- お笑いコンビ「世阿弥」の男2:井川修司(イマイガワ)
- ひろみちお兄さん:佐藤弘道
一時間を越える大舞台。
総合的な評価は前回の「連句」より上です。格段の進歩。ブラボーブラボー。よくぞここまで。
俺の読み取ったテーマは、「深いが渋い古典芸能」と「派手で表面的な今風芸能」の対話です。
表面的な人気取りと「本物」。これはどの世界*1でも永遠のテーマです。
多くの天才が育てて来た伝統あるコアで深い技術は洗練され無駄がなくなりますがしかし難解で敷居の高い代物になってしまいます。ひとびとに理解されなければ芸能の意味がありません。
センスと瞬発力のひらめきのまぶしい大衆受けする芸能は数字と金は稼げますが浅いので長続きしません。
浅い芸の根源とされる「テレビ」のディレクターに、深い古典の側の野村万蔵が扮する面白さ。
テレビ的お笑いVS伝統芸能狂言。
また、金ぴかの衣に象徴される大衆受けに徹したラテンな音阿弥にも野村万蔵を配します。
幽玄VS流行。
その構図に問いかけられる本質的な問い
「何故仕事するのか」
答え「寿福延長」*2
目的を達する手段としての
「花はこころ、種は技なり」
技術!
観るひとのこころに花を咲かせるSEEDこそが”わざ”である。
こころに花咲かせ豊かにしあわせにすることが使命であるのが芸能者であるということ。
「現代狂言?」と冷笑されもしただろう。
無理解や白眼視、敬遠も味わったろう。
迷いを隠さず無力感を否定せずそれでも喜ぶ顔のために安逸を脱し敢えて進歩を目指して芸を変える道を選び続ける気迫。
覚悟を決め末永くお互いを認め合い高めようする意志。
音阿弥万蔵のダンスを観よ。どれだけ崩しても肩は不動。なんという身体操作。なんという功夫。
世阿弥南原の舞、社交ダンス。引き出しはこれから身につければよい。発声は確実によくなっている。
世阿弥扇丞は扇子のちいさな音ひとつで「時間を止めた」。想像できますか。あのラストの舞の「意」の無さたるや言語を道断する不可思議。
5,6人の若手たちのダンスの凛々しさ陽気さ。
ディレクター万蔵のアドリブ*3の舞台度胸。
狂言師島崎の楽しそうな演技にこちらもしあわせになった。
嗚呼。
笑った。息を飲んだ。目を見張った。
多くの理解を得られますように。
狂言寄りだった前回に比べ
コントへの歩み寄りと挑戦が見られた今回
次回はどれだけ高みを見せてくれるだろう。
期待しております。
ありがとうございました。