散歩雑記 古墳、農家

市内の東南方面

お昼過ぎ、天気よし。俺と嫁さんは散歩することにした。
駅から遠く離れた市の東南方面は商店がない、自販機もない。集合住宅はまばらで基本、一軒家だ。
熱中症対策にペットボトルで水分補給しつつ歩く歩く。
坂が多く起伏が激しい土地である。 川沿いの住宅は恐ろしく高くに作られていた。水害が酷かったのだろうか。

古墳広場

坂の途中に古墳広場とやらを見つけ、俺と嫁さんはそこに立ち寄った。入り口に馬の埴輪がお出迎えしていた。俺はひんべえだ、ひんべえだと言った。
広場の階段を上がるとこんもりとした丘があった。嫁さんはまさか?と言った。ベンチそばの解説を読むと果たしてそのまさか、丘は前方後円墳の、後円墳部分だった。俺と嫁さんは、我が市内に小規模ながら古墳が存在していた事に大層驚いた。

農家建築

古墳広場を一巡りして道に出る。看板に旧タカハシ家、とあった。一体どこのタカハシさんだか分からない。俺と嫁さんは看板の案内に従い歩いた。嫁さんは香川のイサムノグチ美術館を思い出すと言った。
立派な公民館の隣に、タカハシ家の入り口はあった。ここまで来てもやはりどういう所か分からない。未舗装の小道を進むと垣根の向こうに農家が現れた。

俺と嫁さんはその風情の素晴らしさに絶句した。右手に納屋、正面に藁葺屋根の主屋。裏手の斜面はなだらかな雑木林で、材木置き場と水神を祀った祠があった。主屋の左手奥は蔵。大きな錠前が掛かっている。
解説板によると、建物は江戸時代の一般的農家建築であるという。周囲の状態込みで保存されており、大変貴重だそうだ。
係の人の案内で俺と嫁さんは主屋の内部に入った。屋内は薄暗く、初夏だというのにやけに涼しい。風通しが良い。土間には竈があり煮炊きをしたとのこと。居間は板張り、特別な小部屋が二つほどある。ひとつは客間、もうひとつは奥の部屋と呼ばれる異空間で、これは葬儀や出産時に使われたそうだ。
俺と嫁さんはこの農家を気に入った。

お寺、帰路

立派なお寺があったので立ち寄る。たぬきのお坊さんの置物がかわいい。
道の向こうを見やると幹線道路らしいものが見えた。このままでは多分隣の市へ入ってしまう。我々は進路を変えた。
全体的に個性的で変わったデザインの住宅が多い。印象として、なんだかこの地域は、全体的に豊かなようである。
俺と嫁さんは歩き続けて疲労を感じた。コンビニを見つけたので、スマホを使って場所を特定し、気ままな散歩は終了した。地図に従い一路駅に向かう。想像以上に奥まった場所にきていたらしい。駅ビルのお店で一服する頃には既に夕方だった。
俺は今日腕時計をしていなかった事に気が付いた。面白い散歩が出来たのはそのおかげかもしれない。