ガルシア・マルケス死去

我が友の人生を変えた一冊が大著「百年の孤独」である。彼はいつ頃読んだのだろうか、気がついた時には、友はゼータのカミーユを愛するキ印では無く、ゼータのカミーユラテンアメリカ文学を愛するキ印にクラスチェンジしていた。
俺は熱心な本読みではないのでそんな彼を目を細めて見ていたが、ついには一人の美男子をここまで高みに押し上げた書物に対して興味を抑え切れなかった。

百年の孤独

百年の孤独

俺は百年の孤独を語る言葉を持たない。その体験はめくるめくものであり抱腹絶倒でありむせ返る大地の匂いと奇怪な人物が詰め込まれた一大絵巻だった。歴史であり物語であり魔術書であり幻想譚だった。
濃密な濃密な書物。おお、マコンド。
ガルシア・マルケスとはそういう現象だった。
実のところ、氏の衝撃は我々の世代のものではない、一回り二回り上の世代のもののはずである。俺や友の衝撃はいわば残響、影に過ぎない。そんなチョコの一欠片で、俺達は浮遊した、海面を歩いた、シーツが翻ったら連れさらわれた。
ガルシア・マルケスとはそういう現象だった。