Vol.4 不思議な子供たち 『物理の博物館』 演歌歌手

不思議な子供たち

  • テッド・グーセン 森慎一郎訳
  • エッセイ?です 特に表記なし。前章「Kids!」の続きか。
  • 概要。文学における子供。筆者は暗い目をした孤独な子供に惹かれる。金史良の短篇「光の中に」山田春雄少年。ジョイ・コガワ「失われた祖国」ナオミ・ナカネ。社会の不正の矢面に立たされる子供たち。声を出し過去の不正を正そうと叫ぶことができる。文学の中の子供が持つちから。

感想。あちらに行きこちらに飛び行き先が分からないのに気が付くと終着駅に到着してた。見事な手際。


ふたつの小説名前すら知らなかった。なんとも鬱鬱とした内容だ。あらすじだけで既に怒り悲しみに目がくらむ。
文学は眼前の飢えたものにパンを与えられるか?無論与えられるわけがない。
文学とやらに万が一価値があるとするならば
響け弾劾の叫び 届け勇気の光り 知れ忘れられた闇

『物理の博物館』

  • 小川洋子
  • Fictionとのこと 小説です
  • あらすじ。定年退職した書籍編集者が、初めて手がけた書籍『物理の博物館』。少年時代の思い出。廃墟に住みついた不気味な女。近隣住民と視線を合わさずいつも独り言をつぶやいている彼女は少年達に「あたしは作家」と教える。信じない少年達。ある事件のあと主人公の少年は、独り言が意味のないたわごとではなく物語であることに気付き書き留める。

感想。濃厚な物語の予感と、後味。良作。


誰も彼女をかえりみることはない。
物語を紡ぐ側とその傍らに控える側。
物語を紡ぐという行為の異常性またその意義と無意味さ。
紡ぎ手をかげながら支え知られることなく励まし後姿に礼をするもの。
いったい小説など書いてどうなるだろう。
物語に押しつぶされながら絞りだしてどうしようというのか。
全てをすり抜け通り過ぎ何かにぶつかるときを願い祈る文学という営み。
その信仰。その行為が尊いと信ずること。

大丈夫です

ああひかりをもっとひかりを

演歌歌手

  • 川上弘美
  • 連載「このあたりの人たち」4
  • あらすじ。赤井くんちの犬、クロ。吠える追いかける噛み付く嫌われ者だ。クロが空き巣を捕まえた。三年後死んだ。そののち引越した赤井くんは演歌歌手になったと噂を聞いた本当かどうかはわからない。

感想。すこしパワーダウンを感じました。