風雲児たち 幕末編 14

風雲児たち 幕末編 14 (SPコミックス)

風雲児たち 幕末編 14 (SPコミックス)

アメリカVS徳川幕府 議題:日米通商条約

アメリカ・ハリスが通商条約を幕府に迫るところから始まります。
通商条約は開港つまり徳川幕府方針の屋台骨である鎖国の「終焉」を意味するため
交渉にあたる老中たちは誰もが及び腰。そこで時間稼ぎ的苦し紛れについ
「通商条約締結は、京都朝廷の許可が必要」と言ってしまいます。愕然とするアメリカ側。
日本の最終決定権が朝廷=天皇にあると徳川幕府が発言してしまったわけです。
失言に気付いた幕府側はあわてて形式的なものに過ぎないと強く主張。
とにかく強引にアメリカ側から時間を貰います。

徳川幕府VS京都朝廷 議題:日米通商条約許可、次期(14代)将軍後継者

  • 日米通商条約許可を下さい

幕府は最終的に老中堀田が自ら出向き、通商条約許可を天皇に貰いに行きます。
ところが天皇はこれを拒否。焦る堀田は窓口の公家を通じて許可を得るよう画策、なんなく成功するかに見えましたが
意外な伏兵・貧乏公家岩倉具視が仕掛けた88公家デモ行進により京都朝廷は開国不許可の空気一色に染まります。
岩倉具視は開国は時間の問題、しなければ日本が滅ぶことを承知の上で言い放ちます

これはチキンレースやさかいな

これを機に、250年押さえつけられてきた幕府朝廷関係を少しでも朝廷優位に導く駆け引きだったわけです。
最終的に朝廷は、条約締結を許可しないことを決定します

  • 14代将軍は誰?

当時幕府は後継者争いで内部分裂していました

    • 革新派 →水戸を中心とする「聡明・年長・一橋家の血を唯一引かない一橋家の当主(!?)」一橋慶喜派と
    • 保守派 →家定のいとこ「血筋的にもっとも継承権が強い・でもまだ12歳」紀州藩徳川慶福を担ぐ南紀

常識的に考えて諸外国が押し寄せ始めた国難時には賢い将軍が望ましい。
老中堀田は朝廷から「慶喜が後継者」のお墨付きを貰おうとしますが
こちらは保守派井伊直弼と、御しやすい将軍を望む公家の思惑によりやはり事実上失敗
何の成果もなくほぼ手ぶらで京都を後にします

慶喜派VS南紀派 議題:14代将軍

条約は不許可、後継者の指示は棚上げというさんざんな結果でしたが
老中堀田はもちろんそれをそのまま報告できません
解釈と断言でそれぞれ「開港に前向き」「14代は慶喜」と決定してしまいます
通商条約はともかく、愕然とする南紀
その夜!家定の生母本寿院が抗議の自殺未遂(狂言?)、
家定に強く慶喜後継不可を迫ります。一度慶喜OKの許可を出しているため困り果てる13代将軍家定。
彼は保守派の言をいれ奇策に出ます。空席であった老中より上位の役職・大老井伊直弼を根回しもなく任命。

井伊直弼の決断

一夜にして諸大名のトップに躍り出た元部屋住みの井伊直弼
ふたつの大きな議題
日米通商条約に関しては朝廷の意向に従うと穏健な態度をみせます

もうひとつの14代将軍ついては「慶福推挙」で皆をねじ伏せます。
彼は高度な政策能力を持ち(ひこにゃん彦根藩の名君だそうです)、諸情勢に通じ開国も視野に入れた見識の持ち主でしたが
今日の幕府の危機は、外様を含む有力大名の顔色を窺がう協調路線の「弱い幕府=将軍家」に起因すると判断し
強い幕府=強い将軍家復活のため江戸城の大粛清に乗り出します
江戸城の状況を知った島津斉彬は日本が滅びかねないその愚を憂慮し行動を決意します
一方アメリカ代表ハリスは調印をいいかげん待たされ続けて半ギレ。
国際情勢(特に戦争関係)をリーク、脅し透かし通商条約締結を迫ります。
そこに現われたのは佐久間象山でした
次巻に続く。




政治的駆け引きがえんえんと続く14巻
お も し れ え
幕末の有力者達はほぼ全員開国の必要を認識していたわけです。口をそろえて攘夷なんて無理と分かっている。
問題はその方法と程度。
また、一橋慶喜の異様な立場や井伊直弼の半生、最強の困ったちゃん水戸の斉昭を切り捨てるより味方に取り込む外様連のふるまい、各大名のブレーンなどなど
読みどころ充分
強硬策と懐柔策の使いどころが勉強になりますのう