野球号全感想:二月−三月 分数アパート

  • 筆者岸本佐知子
  • 「あかずの日記 1」とのこと
  • あらすじ。ワタシの2月、3月分の日記。

わずかに知性・理性の臭みがしますがご愛敬
翻訳家ワタシの幻想な日々雑記でございます


ひとつめ。
ワタシという視界
両の眼の前方120度ほどがワタシノセカイ
これがにんげん
描かれるのは視界の外
腰の後ろの弟。都内のどこかの分数アパート。アパートのルール。のぞみよりはやい死。うしろからほうい、ほうい。メールの送信者。メールの意図。一階奥の誰か。どこの2Fなのか。建築上のバグ。夜、配電盤なにも書かれていない、ほういほうい、暗闇の中。
闇。向こう。奥。どこか。
視界の外ワタシの外。
みえないけれど、確かになにかいるだれかいる、という皮膚感覚


ふたつめ。
壊れたエピソード。
ハムレット「箍が外れた」詩的な出来ごと
腰の弟。セミ。そろうと消える分数アパート。ボクシングジム兼バー(サンドバック40分打ち放題にワンドリンク付き)。砂浜。必死ちゃん。弟の言葉。ヤマトのワープ。乾燥ドリアン。メール。煩悩ガールズ*1。同級生O。菓子で一句。彷徨えるバー今日の主人は半透明。古アパート鑑賞。ニセ小田和正。同級生K,N井、Y。<向こう側に抜けられます!>。フレーズ。飼っている馬。散髪事故夢。塀の毛。
変わった話を書き散らすのは簡単だが絶妙なそれとなると途端に難しいもの。*2
よくやっていると思う。


文章は読みやすく薄味ながらとぼけた味わい、狙い通りの不気味・狂気もそこはかとなく漂っています。
そこそこの推敲を経ている密度もある。腰で書いた文章はずしりとくる。
まぁ俺は「狂ったような推敲」の文章が読みたいので評価辛めですが。
幻想狂気系日記文体はラストまで完走が困難。次号以降に注目。

*1:このグループは実在してましたが

*2:俺の知る限りポール・オースターはこの手の達人