乳と卵感想:花は秘すべきだが見られねば芸ではない
- 作者: 川上未映子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
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感想。うん、大丈夫。
あらすじ。言葉を使って言葉に拘り抜いた果てに言葉を取り戻しつつ言葉を使わずに相手と通信しない表現で相手と無言に対話が行われる。
哲学を減らし
文学を増量。
我を抑え
読者にやさしく。
見事な適量良い匙加減。
角ととっつき難さが取れ
物語と展開が明確になり
ノイズがクリアになると
べろりと剥き出しの女性身体性。
この女性からだへのこだわりよ。
肉体、こんな他者もないと言ったのはあの夏の夜だったか。
食べ物の描写や
風景のそれに較べて
圧倒的な言葉のボリュームで克明に描きつくされる体からだ身体
男の俺がそれを知ることは無い。
それに共感することも、おそらく理解も不能だ。原理的に不能だ。
永遠の部外者主人公が
少女の絶望を思い出すことは出来ないし
経産婦である姉の精神をわかる予定もあるまい。
語りえぬもの。知りえぬもの。わかりえぬもの。
桃色蜘蛛に翼は無い。
わかっている。
だが。
ごめんで済めば警察がいらないように
わかりませんで終われば哲学はいらん。
ひとは真理の外にある。*1
ほんとにぶわりと噴き出して、
今回、母娘はおのれと卵で自らの境涯をあらわした。
蒟蒻問答ならぬ卵問答。
これは哲学ではない。*2
嫁さんの言うとおり
溜め込んだ苦しみは浄化されたが
大きな問題は保留されて在る。
断頭台のようだった終わらせもせず
確認で終了。ふむ。
真実とは問いかけることにこそ、その意味もあれば価値もある
螺旋繰り返し描き続ける。
胸に巨大なクエスチョンマークを抱きながら。
アクシデントを。
だっていつか越えられない壁を軽やかに超越するから。