『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』感想

ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:序 EVANGELION:1.0 YOU ARE (NOT) ALONE」

原作・脚本・総監督:庵野秀明
監督:摩砂雪 鶴巻和哉
主・キャラクターデザイン:貞本義行
主・メカニックデザイン:山下いくと
新作画コンテ:樋口真嗣 京田知己
総作画監督:鈴木俊二
カニック作画監督:本田雄
特技監督 増尾昭一
テーマソング「Beautiful World」宇多田ヒカル
碇シンジ 緒方恵美
綾波レイ 林原めぐみ
葛城ミサト 三石琴乃
赤木リツコ 山口由里子
碇ゲンドウ 立木文彦
冬月コウゾウ 清川元夢

感想。ほとんどの点で旧作*1を凌駕する。力作。迷ってるなら観るが吉。


まず、単なるロボットアニメとして良くできている。
これが一番大事。
100分前後の上映時間の大半を戦闘シーンに費やしており、好感触。
大爆発の大音響は実際に館内がびりびり震える程で、偶然なのだろうけどナイスな臨場感だ。
金はもちろん、何よりスタッフ・人材の充実を感じた。
この高密度な劇場アニメを短期間で仕上げられる組織を擁している時点で庵野秀明は人物である。
旧作より劣るのは劇中の新音楽のみ。
作画、戦闘シーン、セリフ、新プラグスーツや使徒デザインのマイナーチェンジなど各種デザイン*2、物語、付随するガジェット、人物描写、風景描写などなど全てクオリティをあげてきている。
また、富野の新訳ゼータと比較した時、エヴァというアニメ(というよりガイナックスの演出)の要は間の取り方にありと再認識した。
だからこそ場面場面をパーツとして扱え、比較的容易に無理の少ない総集編が可能なのだろう*3
さていくつかの新基軸についてはもう解釈や推測が面倒なのでやらない。




といいつつ。
繰り返される血液のイメージ。
コアを破壊された使徒は形状を保てなくなり崩壊するようである*4
ウルトラマンの怪獣の死体はどこへいったかという疑問に上手く答えている形である。
謎めいた使徒の不気味さ特殊性神秘性を増す効果もある。
棺の歌ホモとかラミエルとか地下のリリスとか
まあツッコミどころ満載だが
とりあえずこのへんで知らん顔しておく。

読み解くのに疲れてしまうわ


サキエルに国連軍が大量の通常兵器で攻撃を仕掛けるシーン。
ラミエルを迎え撃つ第三新東京市の攻撃ビル群の戦闘態勢準備シーン。
日本全土の電力を掻き集めるシーン。
ただただ快感だ。
たまらなくかっこいい。
だからガイナが好きなのだ。


ヤシマ作戦遂行寸前に挿入される「ふつうのひとびとの表情」
シェルターのなかであろうか。
何かを予感し何かの訪れを待っているような。
イベントを見物するような、その顔
彼らを見たとき、俺は第18使徒人類の強靭さを垣間見た。
俺ら、強いな。


物語を語り直すこと。
罪悪感。
許されないという禁止。
なぜ?
語りなおし、語り継がれはむしろ近代までは通常であった。
口承芸能はいうに及ばず、千夜一夜三国志演義など異本が沢山存在する。
美術の世界でも、画家がひとつのモチーフを延々書き続けるのは当然とされる。
なのに、近年の娯楽作においては吉岡のタイラーシリーズ、富野のゼータくらいしか例を思いつかない。
強くタブー視されている感がある。
こちらのほうが本編の解釈よりも魅力を感じる。


予感としては、この新エヴァパラレルワールドくさい。
隣の世界の旧作エヴァとリンクしそうな気がする。
楽しみ楽しみ。
我等の遥か上を行け*5

*1:テレビ版及び旧劇場版

*2:これには異論があるかもしれないが、俺は認める

*3:富野の作劇は基本、群集劇であり、うねるような状況変化時代の流れ政治判断に特徴がある。そのため一場面を抜き出して繋げると話が飛び違和感が大きいようだ

*4:劇中でも「形状崩壊」(もしかしたら「形象崩壊」?)という表現が使われている

*5:斜め十五度でも良し