自分の頭と身体で考える

自分の頭と身体で考える (PHP文庫)

自分の頭と身体で考える (PHP文庫)

世界樹ばかりでもなんなので感想でも。
養老孟司氏と甲野善紀氏の対談集である。奇妙なとりあわせ。
本対談は十年ほど前に行われたそうだ(単行本の初出は1999年)
もっとも取り上げておいて無責任なことだが、俺は今この本が消化し切れなくて感想が書けない。
大枠・流れとしては日本社会や学会、武術業界の腹立たしくおかしな点を縦横に批判しつつ、日本という仕組みにもいい所がなくはないといったあたりに収束していく。
問題は批判の際、具体例を挙げたり独自の観点から直言するのだが、そのやり方が独特すぎて俺のキャパを越えておりついていけない。これが困った。
養老先生は「解剖学」という方法論を自覚的に習得練磨されており何でも解剖する。なのでテーマさえ与えられれば原稿書くのに困らないらしい。テーマを方法論に従って料理するだけだから。言うは易し。
甲野先生は自分の武術を創作中で、邪道正道なく使える身体操作は何でも使う。天才でないことを自覚している節があり(事実かどうかは知らん)、ただ近代の日本人が捨て去り省みなくなったやり方をヒントにからだの運用を体現する。
生まれてこの方身体性を無視し頭の中だけの理論武装が大好きな俺の世界観ではこのふたりは異様過ぎる。己の世界観を壊される*1というのは切実で反射的な恐怖。拒否感が強くて叫びだしそうだ。
その恐怖に反逆する。
たぶんもう実際に掛けてもらったり見たりしないとどうにもならない。
ではそれをやれ。

*1:これを「有る時は境を奪うて(人を奪わず)」、という。発狂の危険をも孕む