漢字之王

たぶん日本で一番漢字に詳しかった白川翁逝去。合掌。
中国文学にも暗い俺としてはどれほど偉大であったか表現できない。翁の漢字の解説をいくつか読んだことがある。もちろん文献学的考証を基礎にしているだろうけど、解釈の最後はアクロバティックでインスピレーションに満ちていた印象がある(誉め言葉)。禅問答か霊感のような感覚を覚えたものだ。この「手法」は学問からは批判もあったろうと推測される。
しかし文字は人間が生み出す。もとより当時の人間の世界観など想像で埋めるより他ない。
そして不思議なことに翁の解釈はいきいきとした説得力があった。
「漢字を何年も長いこと睨んでいると、漢字が意味を語りかけてくる」といったニュアンスの発言があったように記憶している。これは良いとか悪いとかいう次元の話ではない。研究に一生を捧げた翁には言う資格があるとおもう。