メカビ感想その20:p72−81
- 青春の殺人者(テロリスト)が生まれる日:p72−81
- 要約・抜粋
- 人間が見ている「現実」は、フィクションである。
- 近代の大きなフィクションの限界吐露。「戦後ヨーロッパの哲学者は、ヨーロッパ中心主義や人間中心主義、ロゴス中心主義の破壊と脱構築をえんえんと行わなければならなくなりました。」
- 「アメリカは、民主主義布教のための十字軍と化したのです。」
- 「恋愛とはパーソナルな宗教なのです。」「巨大な権力者が登場しません。その点が民主主義的だったのです。」
- 感情を脳内化学作用で説明。その結論は、「恋愛と子育ては決して両立しない」
- 少子化問題は恋愛至上主義台頭の結果。
- キリスト一神教の如く、恋愛至上主義は多神教たる萌えに不寛容。
- 不幸な男がテロリストに至る過程。「大乗テロ」と「小乗テロ」。「Op.ローズダスト」紹介。
- 男たちを癒す戦後のフィクション=物語の概要。
- 世界には一元論が溢れている。
- 現実を現実=真としそれ以外の世界を偽とする「三次元一元論」
- 脳内の理想世界を真とし、偽である現実を破壊して理想世界を実現させようとする「二次元一元論」(大乗テロの果て)
- 「三次元」は「権力者が持っている二次元世界」そのもの
- 三次元一元論は権力を持つ者が持つ一元論、二次元一元論は権力を持たない者が持つ一元論。
- 実のところ同じものである。
- 「二次元」と「三次元」の「二元論の世界観」の提唱
- 「神はいないから、萌えキャラを信仰しても構わない」
ところで、戦後のフィクション=物語の概要を図示した「図6」は、「現実理想」「過去未来」「集団個人」の三軸で戦後物語を再配置したもので白眉。労作である。
目に映る現実=三次元。
理想妄想の世界=二次元。
さて萌えを嫌悪する恋愛至上主義者には、共同体・体制というものが権力者の二次元であるのだから没入するのは己の首を絞める無益な信仰と説き。
萌えに没入し過ぎる喪男には、歴史が教える「個人の理想を現実に敷衍すれば革命者とならざる終えない」という黒い怒りの危険な終着駅を諭し。
妄想と現実をうまく使い分けていこうと提案する。
公に在っては儒家(=共同体優先)、私に在っては道家(=個人快楽優先)というお話。
良く出来ている。
このバランス感覚、氏の求める萌えに対する態度は、その派手で挑発的な言動とは裏腹に一目置かれる「趣味人」のそれに重なるのではないかと感じた。
三次元の「拒否」を源とする二次元を愛して止まない氏は、三次元の「否定」が出来ない。
社会的動物において集団内に属さない「個人」は存在しない。世界外の存在者は死者のみ故に。
小さな呟き「あんたたちに迷惑は掛けない。うまくやる。だから俺たちが在る事を認めてくれ」
マイノリティの交渉者。脅し透かしおだてあげる高度なネゴシエーション。
なるほど人物だ。
氏の文章は初めて読んだが独特だねぇ。数多の流派の技が飛び交うヴァーチャファイター的文章世界。コマンドも入力しやすいし単純なだけに駆け引きが熱い。
技の組み立ては地味で粘り強く、きちんとオーディエンスを驚かす見せ場も用意されてる。
トリッキーに見せかけて正統派。
敵は強いぞ、恋愛至上主義。みんなを守り抜け。
ラスボスは空爆大好き十字軍だ。
忠告。後ろに気を付けて。デビルマンは作り話ではない。
- しろはた〜生きている女の方こそ幻だと、今しがた気がついた 私は人間を辞職する!∩( ・ω・)∩
最後のユニコーン ピーター S.ビーグル 鏡明 早川書房 1979-10 by G-Tools |