間宮食堂

間宮明信:佐々木蔵之介
宮徹信:塚地武雅ドランクドラゴン
間宮順子:中島みゆき
葛原依子:常盤貴子
本間夕美:北川景子
本間直美:沢尻エリカ

感想。きっと記憶に残らないけど、こういう映画は好きです。


映画鑑賞前。男ふたりが笑顔で起立しているポスターを見る。これは公式ホームページトップ画像とほぼ同じ。明るい色調からほのぼのコメディーを連想する。原作は江國香織とありいぶかしむ。江國女史は真面目な恋愛物のイメージが強い。さらに監督が森田芳光でまた意外。おかしな組み合わせだと興味をそそられる。どうやらこのばかっぽい男たちは兄弟であるらしい。勝手に無職で半ニートであろうと推測する。
鑑賞後。
驚いたことに(失礼)兄弟は無職ではなかった。社会に適応した大人だ。兄貴はビール会社の研究員、弟は小学校の用務員さん。職場で浮いた感じも無く、普通に手堅く勤めている。
舞台は東京らしいけれど狭い商店街といい年季の入った銭湯といいマンションの近くの道といい「どこだここは」な感じ。高いビルが出てこない。
整理されているんだけど壁一面の本棚、そこに詰まっている辞典・大百科の類、モノポリーを初めとするボードゲームたち、鉄道の紙模型。
兄弟の子供っぽさはイメージ通りだった。劇中曰わくマニア兄弟。真剣に今日の反省会を開き薀蓄を語り合いクイズを掛け合い続ける。お互いが居ること居たことを喜びいつまでも仲良くやっていこうと宣言する。母親祖父母を大事にし、誕生日を兄弟そろって祝う、それが当たり前のことであり当たり前に実行する。
違う。教えられてきた大人の男とは違う。
それはこうだ。「兄弟と言えども、プライベートは大切を建前に距離を置き、仕事が忙しく田舎の両親を一顧だにしない。颯爽としており割り切ることができ卒が無いが真心も無い。欲望は多くある。」
仲が良い事が異常な社会。あれ?どこが異常なのだろう。


あらすじ。三十代と思しき兄弟ふたりが一念発起し、果てしなく不器用に女性に接近しようと試みる。


ずっとばか兄弟の映画だと思っていたら、ラスト近くでばか兄弟とばか姉妹の映画であることに気が付いた。あれだけ印象的だった女教師がさっと退場し、残るのはちょっとやさしくなったばか姉妹。
「これは友情の抱擁」「ここ小学校だから笑いながら離れて」
な、涙が。


えっと、監督は何を描きたかったかよく分かりませんでした(誉め言葉)。
普通の世知辛い姉妹の前に現れたこころやさしき妖精。ムーミントロル。
こっち向いて。恥ずかしがらないで、もじもじしないで。
あ、でも近寄らないで。

えー主演ふたりの間と呼吸見事。ヒロインたちは紋切り型ながら魅力的で脇役も目を引く。映画の多くを間宮兄弟の「らしさ」に費やし、おそらく江國女史が小説内では延々こだわりつづけた小物をばっさり切り捨て、いい空気。
ここは桃源郷。ふたりのユートピア。何人も立ち入れない聖域。小さな小箱。
年年歳歳、波風がちょっと立つ。
歳歳年年、ほんの少し何かが変わる。
ゆっくり、ゆっくり。
変わって欲しい様な変わって欲しくない様な、変わらなきゃ駄目だよと感じる反面、否応無く変わってゆくだろうし、だったらまだこのままで。もう少しだけ。
なるようになるさ。