思えば遠くへきたもんだ

幕末太陽傳 [DVD]

20年近く見たかった映画はこれくらい。
フランキー堺には驚かされた。本職の俳優にだってこれだけの逸材は少なかろう。恐ろしい。石原裕次郎ノーコメント。演技がどうのレベルではない。ただ確かに目が離せない妙な顔をしていたなあ。
「己の才覚だけが頼りの町人」居残り佐平次の立て板に水の江戸弁軽やかな動き愛嬌とふと差す影の表情いや恐れ入った。
全編に落語を散りばめ、攘夷の志士を煙に巻き、何を考えているか解らぬ掴み所のないしたたかな怪人が、調子っぱずれの田舎お大尽から退散するラスト。遊郭の出鱈目な乱痴気騒ぎを巧みに制する悪知恵もまっこうからの愚かさには通じやしない。痛快さなくなにやら寂しい情景「どこまでも生き抜いてやる」捨て台詞もそれまでの頼もしさどこへやら泣きべそのような必死の後姿。ああ。
俺はこの映画の8割方がわからない。わかりたくあるが、それには自分と人生を信じすぎている。亡八に女郎その客理想追う攘夷志士、いや地に足の着いた生活人が見事にひとりも出てきやしない。俺ぁ粋じゃねぇなあ。

岡田真澄？この小僧が。出世したねぇ