御開帳

スコープドッグ1/1を見てきた。
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感想を書く前にいくつか。

以下経過と感想。
会場に到着した。
入り口をくぐると幾つかの作品があった。スコープドッグは見当たらない。どうやら仕切りがあり、別展示の模様。
それならば、と展示されている作品を眺めてウォーミングアップ。
もうひとつのお目当て「記念品のボルト」を手に取る。
ずしりと重く、感嘆する。
俺は文字ばかり読んでいる人間だ。紙以外にもパソコンの画面と電子データを取り扱って生活している人間だ。だから重さに慣れていない。写真を見るように眺めていた実物のボルトが、予想よりずしりと俺の手に重いこと。衝撃。
購入する。先行発売の書籍「タタキツクルコト」も購入。

タタキツクルコト 1/1スコープドッグ制作日誌
倉田光吾郎
インフォバーン 2005-05-13


by G-Tools

いよいよ仕切りに向かう。順路の指示に従いなかに入る。
左手は壁。右手に気配。右を見る。見上げる。
思わず声無く笑う。
こわい!
スコープドッグの背中だ。奴の背面は垂直に切り立っている。あまり凹凸は無い。
近い。展示されている別室は狭い。
良く見る。背中。脚。腰。腕。
素材は鉄とのことだが、俺にはわからない。鉄なのかこれ。茶色い。錆だ。
高さは目測でひとの二倍強?天井ぎりぎり。
狭い部屋と奴との間を進む。閲覧者は10人ほどか。無言か小声。人の流れに沿ってゆっくり奴の左側面に回りこむ。
奴の左手は銃だ。4つ?の銃口がついている。こういうものをガトリングガンと呼ぶのだろうか。後で気が付いたが腕に鉤爪が折りたたまれている。

正面。ため息。目線の高さには膝と腰。見上げればコクピットの胸と、頭部のアイカメラ。スコープドッグと言えばこのきゅるきゅる回転する表情豊かなアイカメラだ。
側面からは見えなかった右腕に目をやる。握りこぶし。でかい。でかいこぶしだ。俺のこぶしの幾つ分だ。頭ほどもあるてっけん。太い、ゆび。いろいろな想像が頭をよぎる。
足元には、奴が使用すると思しき銃。鮫くらいの大きさ。装甲騎兵ボトムズOPが思い出される。その銃の上に兵士の被るヘルメットが乗っている。ああキリコが被っていたヘルメットだ。
奴の正面には幾ばくか空間があった。数人がじっと奴を見詰めている。
俺もまた壁際まで後退し奴の全身を視界に収める。
立っている。そのことに驚く。バランスが取れており不自然さが微塵も無い、どれだけあらを探しても。
美しい。
改めて近寄り様々な角度から眺めるが、まったく無理がない。なによりも。アニメに描かれていた様々なカットのスコープドッグと照らし合わせて違和感が無い。息を飲む。真善美と呟く。
こわい。
こわくてたまらない。俺の理性が不安に駆られて必死に奴の「総重量」を知りたがっている。数字を欲している。単位に測られ計量されたデータが欲しい。喉が渇く。俺は怯えている。腕がごとりと落ちる。奴が倒れこんでくる。拳が俺に向かって振るわれる様を思い浮かべる。
後輩はあれは「仁王」だと言った。子供泣いてたと言っていた。
さもあろう。
幸か不幸か、俺は、知っている、奴が動かない理由を。
俺が信仰する知識常識科学物理法則は奴が動かない理由を並べ立てることが出来る。
ただそれだけだ。そうやって俺は安心しているのだ。こわいのだ。このひとのかたちをしたおおきくおもいものが。
脳が作り出した幻想であろうとなんであろうと、奴に最接近した時には確かに質量を感じる。息が詰まる。
自動車だってそれなりの重量にそれなりの体積を持つ。
しかしスコープドッグは従順な道具では、あきらかに、ない。
動かないからやっと眺めていられる、物騒なものだ。
兵器。そうかもしれない。いや間違いなくその解釈が妥当だ。こわさの一因に兵器/暴力があると思う。この不発の暴力によって、心底助かった、運が良かった、生きていると思える。つまり「ありがたい」。
暴力は在り確かに在り、それはわたくしに振るわれないでいる。
こわい。ありがたい。
会場を後にした。