映画「大鹿村騒動記」感想
監督 阪本順治
大鹿村は山間の村です
あらすじ。過疎気味の山村大鹿村の名物は、村民演ずる村歌舞伎。 五日後の公演に向け主役を演じるおじいさんと皆は稽古に余念がありません。
ぽこぽこと不思議なBGMから映画は始まる。
山の風景は雄大でしかし村は寂れている。老人たちは元気だ。リニアの議論が白熱している。
そんな生活の合間を縫って、歌舞伎の稽古は行われる。
おじいさんとおばあさんと間男
あらすじ続き。おじいさんの元へ、18年前駆け落ちした妻と親友が帰ってきます。おじいさんの妻は記憶障害を発症しておりました。おじいさんの親友は彼女がもう手に負えない、おじいさんに返すと言います。激怒するおじいさん。村中に波紋が広がり妻に手を焼いたおじいさんはとても歌舞伎どころではなくなります。
おじいさんを演じる原田芳雄。絶対うるさいじいさんなのだ。群れるのがキライで俺は知らねーよ!といいつつ最後には手助けするタイプ、みんなと距離を置き、みんなも遠巻きにしてるけど、いざという時頼られるタイプだ。そういうところが動きと言葉の端々に滲み出て素晴らしい。
おばあさん役の大楠道代。少女の如き恍惚の人から、慚愧と後悔に圧し潰される老妻までこなす表現力よ。
岸部一徳は何だろうあのびっくりするほどクズなのに、つい許してしまう愛嬌は。
極めつけは三國連太郎で、 息を吸って吐くように語る様はもう演技なのかどうか分からない。
仇も恨みも、これまで、これまで
あらすじ続き。そんななか公演前日になって歌舞伎のヒロイン役の男が大怪我を負います。代役が居らず途方に暮れる一同ですが、おじいさんの恍惚の妻が今だにヒロイン役の台詞を覚えており、しかも風雨が引き金になって彼女は一時的に正気を取り戻したことから急遽深夜の特訓が始まります。
そして翌日大鹿歌舞伎の幕が開きます。
感想。重い話です、正解なんてありゃしません。
許せるものでも忘れられるものでもない、やり直そうにも時間は戻らない。割り切ろうにも割り切れない。
だからこそ目を突いた景清の台詞が嗚呼沁みるのだ。
悲しゅうてやがて面白き邦画の傑作。
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