土田世紀さん死去

先日のニュースになるが、ここに書くのは気が乗らなくて放置していた。
書いてしまうと決定してしまう。そう思っているらしい。

子どもの頃「俺節」を読んだ。主人公が歌を歌うとき、紙面に大きく歌詞が並ぶ手法に度肝を抜かれた。歌詞のもつ言葉のちからと、コマの向こうで進み続ける話の展開。両者の合わさった構成。独特の絵柄に、異様なストーリー。
作者の独創なのか先行手法があるのかは知らないが、子供心に迫るものがあった。

定本 俺節 上

定本 俺節 上

続く「編集王」は、漫画雑誌編集者という職業を通して仕事の理想と現実を描いた作品で、これまた興味深く読ませて貰った。
もちろんこの作品はお話であり、熱意がまかり通ることは簡単では無いだろう。漫画らしい、きれいな起承転結をもったフィクションであるだろう。
俺は人並みに漫画が好きである。その漫画がどのように制作されているか、まったく無知であった。というよりも、考えたことが無かった。漫画家がひとりで一から十までマネージメントしているものだと素朴に前提していた。
作品を世に問うということ、一つの作品に多くの人々や組織が関わるということ。多くの人々にそれぞれ思惑があり、正しいとか間違っているとか、限られた時間のなかで渦巻いていること。
編集王 (1) (小学館文庫 (つB-1))

編集王 (1) (小学館文庫 (つB-1))

これ以降の作品は読んでいない。どうして読んでいないのかは俺にも分からない。
でも漫画家土田世紀は俺に刻まれたいた。
早過ぎる死である。俺はスマホの画面にえっと声を上げ絶句した。
いい漫画をありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします。