アニメ「輪るピングドラム」第24話感想:涙の理由を知ってるか

ネタバレ要素あり。注意。


輪るピングドラム 1(期間限定版) [Blu-ray]

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涙の理由を知ってるか俺には分からないが

炎に焼かれる苹果ちゃんを晶馬が抱きしめ愛してるといった。炎は晶馬に移動した。命と蠍の炎の間に炎が吹き上がり分断された。連結器が現れがこんと音を立てて左右に離れていった。俺は声をあげて泣いた。三回目にしてやっと俺は俺の涙の理由を伺うことが出来た。
なぜ、どうして、俺が大好きな仲良しの苹果ちゃんと晶馬が楽しく過ごす日々が失われるのか。なぜと言ったが理由を聞いているわけではない。どうしてと言ったが説明を求めているのではない。そんなことは知っている。*1
俺はふたりが引き裂かれ訪れたであろうふたりの時間がもう訪れないであろうことを承知したしてなお俺は俺はそれを憎む。それを怒る。それとはなんだ。それを運命だというのなら俺は運命を許さない。俺はこのふたりにきっと成立したであろうピングドラムを見たかった。俺はピングドラムを好む。ぐじぐじした晶馬をしっかりもののストーカー女がぺしぺししながら紡ぎ上げたであろう深いピングドラムのときを見たかった。
俺からその快楽をとりあげた原理を憎む。仕組みを憎む。
この世界は間違っている。なぜなら俺が悲しいからだ。
がこん。

僕は呪いのメタファーなんだ


何故こんな。どうして。天と地のあいだの百万の哲学は腹を括らねばならぬ。怒怒怒

覚悟とは苦痛を回避しようとする生物の本能さえ凌駕する魂のことである

山口貴由はいう。命は尊い。自分の命はなお大事である。命を守り長らえることは至上命題であり、命を粗末に扱うのは悪である。生存戦略。だがその尊いはずの己の命を投げ打って他者の命を救う行為を悪と呼ぶなら呼べ。それは覚悟と呼ばれる魂のあり方である。
餓死寸前の男の子が命をつなぐリンゴを見つけたとき、俺ならどうする君ならどうする。俺は朦朧とした意識の中夢中でかぶりつき命をつなぐだろう。ここにもうひとりの餓死寸前の男の子がいたとしても彼の命=俺のではない命など省みず*2むしろ蹴倒してでもリンゴを俺は食べるだろう。

本能も遺伝子の命令も無視して
誰かを愛したとしたら
神様
そいつは、本当にひとなのか

餓死寸前の男の子が命をつなぐリンゴを見つけたとき、彼は大事な果実を割りちからの限り手をのばし赤の他人に己の所有物を分け与えた。かんちゃん、「それ」がピングドラムだよ。その魂のあり方。

一番大事な言葉なら知ってるわ

乗り換えの呪文を唱えよう。
覚 悟 完 了 !

君は荒野の悪魔に似てるね。。。ていうか眞悧君だよね?

俺は眞悧先生だ。この世界は間違っている。君たちは絶対にしあわせになんかなれない。真に純粋な生命の世界は利己的なルールが支配している。
世界は美しい?悲しみや涙に満ちてさえ?
そんな世界は願い下げだ。

初めまして
僕は大審問官だよ

眞悧先生は愛するを信じている。命の際極限状態で生存戦略を越え閉じ込められた箱を越え出て*3自らを越境して他の命を救う行為の実在を渇望している。
その態度は存在しない、しあわせになんかなれないといいながら誰か僕を愛してると言ってくれといっている。
キリストは蛇を救うのか?

さあ。でもあたしはもう行くわ。

誰だ?ふたりの男の子が閉じ込められた檻を向かい合わせにしたのは?誰だ、もし、ひとりの男の子が運命の果実を檻の隅で見つけたときに、もし、ふたつに割ったときに、もし、小さな男の子ふたりが精一杯腕を伸ばせば、運命の果実を一緒に食べられるような距離に、ふたつの檻を配置したのは?
もしそんな男がいるのなら、彼は愛するの実在を信じられずでも信じたくて信じたくてしょうがない、そんなよわくてやさししい男に違いない。

ピングドラムよ、まわれ!

ちり一つ残せないのさ

ひとの思いは世界を越える。ひとの気持ちは物理を越える。冷たい方程式を愛しながら憎んでいる。
アニメ「輪るピングドラム」は、両親が不在の物語である。両親はただ、子に対して愛してると言わなかったものとしてのみ、出演する。もがき苦しむ愛してると言ってもらえなかった子供達は、しかし愛してると言ってくれなかった親を求めず、あらかじめ失われた子供達同士で愛を融通する。

大スキだよ!!
お兄ちゃんより

それは思いやる魂、ゾルゲ、ひとのありかた、人間性と呼ばれる。
愛が目に見えたよ、と誰かが言った。


"輪るピングドラム 24TH STATION 愛してる"

*1:説明することができないなら、それは芸術です。

*2:折られた足をいじられると彼は痛いが… わしは痛まない……!! この一事だ… この一事だけが真実……!

*3:byフッサール