映画「転々」:「そうねぇ」

俺は嫁さんとよく歩く。近所へ。遠くの店へ。歩きながら話しながら歩くのが好き。
たまにそのまま帰るのが惜しくて遠回りしたりふと知らない道へ向かったり。
こういうの散歩というのだろうか。散歩か。まぁいいや。

転々 プレミアム・エディション [DVD]

転々 プレミアム・エディション [DVD]

監督・脚本:三木聡


青年:オダギリジョー
福原:三浦友和
女性:小泉今日子
姪:吉高由里子
店長:岩松了
おばさん:ふせえり
おっさん:松重豊
三日月しずか:麻生久美子

感想。文句なしの名作。これほど欠点のない映画も珍しい。
カレーのごとくことこと丁寧に煮込んだだけ。それがいいんじゃないか。


あらすじ。おっさんと青年が東京を散歩する。


まずは三浦友和を褒め称えねば始まらない。いやまいった。
こんな煮ても焼いても食えないおっさん演じられるんだと感心した。
オダギリジョーも素敵ですわ。ダメで気力のない役柄。同世代の俳優に比べて台詞が上手。
小泉今日子も素晴らしい。気持ちこもってるなあ。
あとはもろもろの脇役まで、皆達者で仕事きっちり。観ていて気持ちが良い。


展開も絶妙。台詞や掛け合いが心地よい。難しい「どうでもいい話題」がとてもいい。
風景。アングル。撮り方。スムーズかつナチュラルでメリハリあって基本に忠実な高レベル。
時計屋のキック一発であれよあれよという間に話が急展開。
動物園。カレー。遊園地花屋敷。
ふたりはどこにも介入しない。お互いにさえも。それでいて。
そうだ土は土に灰は灰に、映画は映画にしか出来ない表現がある。

何の価値もないもの、こと、好き

映像と演技とシチュエーションと。これだけで充分なのだ。
いさぎよいラストに暗転、流れる「髭と口紅とバルコニー」。


あじんせいは複雑だ。ドラマだ。なにも起こりゃしない。