松丸本舗に行ってきました2回目:「よくぞ生き残った 我が精鋭達よ!」

世阿弥風姿花伝」や桂文楽芸談あばらかべっそん」を面白いなあと感心しても
実際上演される能や落語を全然見に行かないのはひとつに
見ても良さがさっぱり分からないことを恐れるからだ。
しちめんどくさいこと考えてないでとにかく見ろともう一人の俺は叱咤するのだが
高尚な芸術に心酔する自分を夢想する俺は
ちっとも魂が震えない感受性を直視したくないのです。
俺は俺が「それには興味がない」と宣言する度小さい自分に絶望する。

数日前松丸本舗の入り口で俺は途方に暮れた。
その量を前にしてふてくされた。食べきれない料理、こなしきれない仕事を察知したとき
俺が真っ先に考えるのは奮起や燃える心ではなく
どう逃げるかだ。
しかたなく効率よく「処理」するために、目次、手引き、インデックス、マニュアルの類を捜す
店員さんに順路を教えてくれと聞く。それがこの特殊本屋にまったくそぐわないこと、意に反していることは、頭ではわかってる。
でも俺は本が好きではないのだ。
興味のあるところを気ままに見てもらえればいいのですがと店員は言いつつ案内図を示してくれた
それに従い俺は番号通りに書名を追っていった。それに没頭した。
この茶室の主人のもてなしを一切拒否した。その企みをくみ取りたくないと思った。
俺はこの空間に俺の枠を当てはめたかった。もてなされたく、なかったのだ


これらの気持ちはすべてあとで気づいた


本日再び松丸本舗にやってきて、俺はすぐさま、タイムカードを押したアルバイトよろしく
前回の「作業の続き」にとりかかった。嫁さんに休憩しようと声を掛けられるまでそれを続けた。
茶店で煙草を吸いながら松丸本舗の感想などをやりとり。
嫁さんは感心し何か思うところあったようで店員さんにいくつか質問をしたそうである。
ひとつの問答に俺は興味を持った
Q「なぜ乱雑に、また、奥の本の前に本を横置きしているのか」A「見つけにくく探しにくくするためです。そのように指示があった」*1
見つけにくく探しにくく。この歌は世界中の書店員/図書館員の手の届く範囲と世界からは出てこない。
松岡正剛だ。宝探し。
ここは遊ぶところ、本読みのテーマパークだった。知を背負うと自負する丸善を舞台に、売りつけるより育てることを目的とした保育の城。風雲せいごう城*2
やれやれめんどくせえ、俺はへそを曲げた。読み解くのに疲れてしまうわ。
さて、メリーゴーランドを前にした夫婦がやることはただひとつ、きゃあきゃあいいながら園内を巡って目に付いたものに片っ端から乗っていくことだ。黙々とした他人など知ったことではない。
結構なお点前でした。ふん。

フラジャイル 弱さからの出発 (ちくま学芸文庫)

フラジャイル 弱さからの出発 (ちくま学芸文庫)

ヘヴン

ヘヴン

「見て見て川上さん!」と嫁さんに引っ張ってこられて付いてたタグが”2009年一番のフラジャイル”(だっけ?)
ふらじゃいるって何?英語?とふたりでふるふるする。
ヘヴンを少女漫画*3の文脈で捉えたのか。その発想はなかったわ

*1:訂正。嫁さんによると探しにくくだそうです。

*2:ひらがなが俺のせめてもの意地である

*3:大島-吉本的