太陽の塔再読

新釈走れメロスがとても面白く余勢をかって春先から転がしてあった太陽の塔再読を果たす

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)

聞きたまえ
時は二十世紀末 所は関東
大学そばの焼肉屋に六人の男女が集った
万巻の同人誌を収集し獣人から無機物まで射程範囲の変態
熊のボディーに少女の魂を装着した漫画読み兼哲学屋
口八丁手八丁推理小説純文学からライトノベルまで網羅する邪悪な機械
高度な脳髄に無用な嗜好を詰め込んだポケモン大好きへたれ会計くずれ
我々が束になってもかなわないもっとも漢らしい漢の中の貴腐人

数年間の大学生活の果て煮えに煮え煮詰まりきって煮しめた筋金入りのホップステップノーヒューチャー。
六人は肉を焼いた肉を食った
飲める者は酒を飲みこの数年間全く進歩しない馬鹿話を続けた。いつしか店内は我々だけになった。
いつ果てることもないかと思われたいつもの日々。
しかし黄金の時間は終わりかけ、このメンツが勢揃いするのもそろそろ最後かとぼんやり予感された
お互いがお互いを憎々しげに見回し嘆息しなんだこのクズどもはと口々に吐き捨てた
高めあい貶めあいどれだけ未来に繋がらないかを競い無意味な事業にアクセル全開で没頭する
そんなチキンランを繰り広げ振るいに掛けられ選りすぐった間抜けども


評価するのは俺たちだ。価値を見出すのは我々だ。
俺はそんなお前たちに認められたい。俺はそう思っていた。


もうすぐ社会に出るだろう。事実そうなった。
すると評価は世間の受け持ちになり我々はそれに合わせていかなければならない。
そこにいややはない。諦めていると言うほどひねくれてもいない。そうあるべきだと思うしまたそうでなくてはならない。共同体が無意味に暴走しては迷惑だ。
我々は評価する権限を失う。否我々の評価を誰も一顧だにしない。
だから俺は決定する。
俺の大学生活サークル生活は何も生み出さず何も益せず駄弁と徒労と空回りに終始した恥ずべき時間の空費であり、
実に楽しかった。実に美しかった。

みつめてごらんよ あなたの中の宝石箱を

西も東も腐れ大学生はなんと愛おしいことだろう