日本のいちばん長い日

日本のいちばん長い日 [DVD]

日本のいちばん長い日 [DVD]

監督:岡本喜八
原作:大宅壮一
三船敏郎阿南惟幾
笠智衆鈴木貫太郎
志村喬 : 下村宏
小林桂樹徳川義寛
高橋悦史 : 井田中佐
黒沢年男 : 畑中少佐
島田正吾 : 森赳
石山健二郎 : 田中静壱
加山雄三 : 館野守男
天本英世 : 佐々木大尉
中谷一郎 : 黒田大尉
田崎潤 : 小薗大佐
8代目松本幸四郎昭和天皇
仲代達矢 : ナレーター


日本のいちばん長い日とは1945年8月14日正午から15日正午までの24時間である。


14日正午、昭和天皇ポツダム宣言受諾を決断。その旨を国民に周知するため玉音放送の録音準備が開始される。
徹底抗戦上等の部下との板ばさみの陸軍大臣阿南。陸軍に対抗意識を持つ海軍大臣終戦に尽力した鈴木首相。
そんな日本帝国上層部の決定を腰抜け軟弱と行動決意する一部の陸軍士官達。
14日午後から夜中に掛けては、玉音放送の原稿策定が閣議に掛けられ紛糾。軍部の面子やら天皇の添削やら入って完成・録音終了に漕ぎ着けたのは14日23時。あとは次の日のラジオ放送を待つのみ…
開けて15日未明ついに一部陸軍士官は決起し宮内省を襲撃占拠する。師団長殺害。政府関係者監禁。天皇居住区包囲。そして玉音放送録音を知った彼らは血眼になってテープを捜索した。いわゆる「宮城事件」である。


何が強烈といってまずこの出来事がフィクションではなく現実の歴史であることだ。
俺は教科書で習った覚えが無い。
様々な立場と思想の男達のタイムリミット付き極限状況下ぎりぎりの決断と行動(行動しないという行動も含めて)が描かれる。我々は結果を知っている。しかしその結果が結果となるまでの道のりは平坦でも磐石でもなく薄氷を踏むが如き細い道筋の末。


映画としては、豪華絢爛むさ苦しい東宝男優どもの演技祭である。役どころもヘッタクレも無い。異常なテンションと熱量をぶつけ合う。軍人どもの動の闘気(これもひとによってタイプが違う)もさることながら、その気を当てられて微動だにしない文官の静の気迫。
印象的なのは、黒沢年男演ずる畑中少佐、天本英世演ずる佐々木横浜警備隊長。二人の熱演は特筆に価する。特に畑中少佐は気違っているとしか思えない。いまにも泡吹いて倒れそう。「…未練…」のシーンは本当のトンデモナイ。よく死ななかったものだ。また、よく見ると実はメインのあらすじと全く関係ない天本君の怪演が浮きまくって笑うところかどうかよく分からない。不気味。


良いとか悪いとかではないのだ。正しい判断は存在せずイベントは起こりあるいは起こらず残りの可能性を踏み潰して一本の道を成した。これはたまたま過去に属するけれども俺が生きているいまここも同じ。


馬とバイクでビラを撒く軍人ふたり。俺はきっと彼らを止めることはできなかったと思う。