パプリカ 感想

監督:今敏
音楽:平沢進
原作:筒井康隆
制作:マッドハウス
パプリカ/千葉敦子:林原めぐみ
粉川利美刑事:大塚明夫
島寅太郎所長:堀勝之祐
時田浩作:古谷徹
山内守雄:山寺宏一

もちろんネタバレ要素あり。注意。


感想。期待が大きすぎたせいでイマイチだったけれど、高評価です。
平沢進の音に乗ってパプリカ(たち)が夢を飛び回りシーンが切り替わりキャラが変化するのが楽しくてしょうがなかったから。
しあわせ。


思い出される作品はイノセンス妄想代理人だった。
イノセンスのパレードは置くとして、状況が反芻される点が共通する。
しかしイノセンスの反復は罠であり狂気と自閉であり打ち破られるべきシチュエーションであった。
対してパプリカでは意識し見つめ受け入れ克服に向かう過程だ。真のループではなく螺旋を描く。
この繰り返しを基調とした治療は結果、克服=成長に繋がっていく。
刑事の治療。それから千葉の治療に。


対立するのは劣等感とそこから来る抑圧されていた欲望の暴走である。
嫉妬。肉欲。支配。障害。
これらを抱えた対立者達は実のところ多くを語らない。或いは語る場を与えられない。そうして凶悪なちからを振るう。
現実と現実のひとびとは夢に侵され夢に巻き込まれ夢に参加する。こころのずうっと奥の方が開放され剥き出しになる。
しかももののけ姫千と千尋の神隠しと違い、なんと女性に飲み込まれてしまう。
集まった穢れが巨大な女性の腹に収まる。雲は晴れる。
そのまま彼らは退場し省みられない。
まったく省みられず静かに都市の復興は進む。
(俺たちを含めた)現実は祓われ最適化された。


同じように妄想=夢=こころのずうっと奥の方が現実に溢れ出したもうひとつの作品、妄想代理人
妄想代理人では妄想は小さな女性から溢れ出た。それこそ都市を埋め尽くすほどのこころが噴出した。
そして女性はすっきり発散し物語は幕を閉じた。だがそれでよかったのだろうか。結局妄想を生んだ歪みや抑圧にメスを入れずただ体外に吐き出しただけで。恐らく彼女は同じように再び妄想を溜め込むだろう。発散し虚無となった胸の内に。
そこで描かなかった救済と充実がパプリカにある。
刑事のこころ。それから千葉のこころ。すべてのひとびとの、とはいかなかったけれども。


パプリカは妄想代理人の完結編と言うこともできるだろう。