漫画夕凪の街桜の国感想:悪意

こうの史代 夕凪の街桜の国 ISBN:4575297445

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

それは祈り
「死ねばいい」と誰かに思われたということ
「やった!またひとり殺せた」とちゃんと思うてくれとる?
せめて
憎しみがありますように
殺意がありますように
「いまだにわけがわからない」彼女たちの
それは願い
冗談でもなく
不条理でもなく
確かに意味があったと
わが身に降りかかった出来事に理由があり…



怒りには怒りを抱けるし
憎悪には憎悪を抱けるだろう
それは天災などでは
もちろんなかったが
彼女たちに「死ね」という思いを抱いた者も
またいない
だから彼女たちは呆然とする
いまだにわけがわからない
誰もが彼女を傷つけるつもりは無くて
ただちょっと困って肩をすくめるだけ



恨もうにも
呪おうにも
いったいなにを
いったいだれを



無関心!
太平洋の向こうに
彼女らの死を望むものなどいないかわりに
彼女らを憶えているものもまたいない



ああ
呪詛は天に
嘆きは空に



よいかね
俺は恐怖し
怒っているのだよ



黒幕が加害者が理由がないことに恐怖する
そんなばかなと憤怒している
奴が落とした!そのために落とした!
そのはずだ!
ところがどこにも犯人がいないわけ
動機もないのよ
事件だけが
起こって
被害者だけが
うまれた



戦争
これは戦争じゃない
広島のどこに戦い・争いがあったかふざけるな
という
生命を掠め取るような行為を
20世紀に
戦争と呼ぶようになりました
うんざりする



かわいらしい絵で描かれると効く
死にたくないから生きて、困惑しながら死んでいく
夕凪は止むし
桜は散る
静かだ