うーむ…

自虐の詩 (上)[Amazon] (下)[Amazon]
ちょいと感想を書く。随分前に読んだからうろ覚えだ。


一組の夫婦が主人公。形式は四コママンガ、それを連続してストーリーを語っていく手法だ。この手法はおそらく技術的に困難なんだろうと思う。使い手としては小池田マヤ辺りが浮かびますね。
内容。夫は働かなくて気に食わないとすぐにちゃぶ台をひっくり返すような男。妻は夫に従順で、バイトして家計を支えています。いうまでもなく激しく貧乏。この二人を中心にクセのあるキャラクターが絡んで「ああ不幸だ」「ついてない」「もう嫌だ」「おんなの人生いっつもこうや」をほのぼのギャグタッチで歌い上げていきます。
そんな話。
これが後半、夫婦の過去や妻の思い出の親友のシーンが登場するあたりから物語はきな臭さをプンプンさせ始めます。きな臭さとは、「?これってこういうマンガだったっけ?」という思い、ただの貧乏劣等感嘲笑いマンガでしょ?を裏切る業田良家の鎌首のもたげっぷりから発する危険信号です。
このマンガを読んでるおめーらはこの夫婦を哀れんで笑ってやがるな?見下してやがるな?馬鹿にしてやがるな?確かにこいつらは見下されても仕方ないくずどもだ。笑えよ。安全圏内から哀れんでろよ。だが覚悟しとけよ…
そんな気迫がじわじわと私を取り巻いています。
え?と気付いた時にはもう遅い、何がどうなってそうなったのか、目を見張るような強さと美しさが現前していました。
みんなから白い目で見られて恥かしさに小さくなっていた妻。いじめられっこの悪循環ですな、縮こまると強者は敏感にそれを感じ取り益々傘にきて無言の見下しをやめようとはしない。
ところがラストに私が見たものはあれはなんだ。
劇的な脳内革命など起こってはいない。彼らは追い詰められて開き直ったわけでもない。花が咲くように別なものが現れていた。
彼らはもう読者の優越感なぞ気にもしない。弱者は強者が作るように、強者もまた馬鹿にする相手なしでは成り立たない。冷たい視線を投げかける対象を失って、俺に残るのは、己の他人より優位に立とうとする浅ましさか。いやそんな後味の悪さを感じる暇もなく、出てくる言葉はただ

祝福。
わーいわーい


あー
こんな感じ。